奴隷住宅か解放住宅か|“しもべ”を育むか“創造性”を育むか

■“しもべ”を育む奴隷住宅
天井高2.4mほどの部屋が並ぶ住宅を奴隷マンション・奴隷ハウスと呼びます。そこで育つ人の個人差は大きいですが、枠を超えられない、という共通点を持ちます。
孫悟空とお釈迦様の5本の指の話があります。多くの人が人生を謳歌し、大きな仕事をし、社会貢献をして、存分に楽しみます。その生き方は、それぞれ大変尊いものです。が、時代・社会の手の平で踊らされ、枠から容易に抜け出せません。会社や組織の“しもべ”だったり、既成の価値観の従者だったりします。同質的な日本では、優秀な人、抜きんでる人はいます。ところが、世界に出ると、小さく見えてしまいます。
天井高2.4mほどの部屋が並ぶ住宅は、足枷になります。思いが、考えが、想像力が枠を超えるのは難しいです。前方だけでなく、上方への眼差しが要ります。一条の光を見る人、窓外の自然に魅入るひと、夜空に思いを馳せる人が、ひょっとしたら枠を超えます。■奴隷マンション
この百年につくられてきたマンションの99%が奴隷マンションです。ほぼ2.4mの天井高の部屋が並ぶ箱の積み重ねです。空間的に変化をつけるとか、ボリュームを大きくするような工夫は皆無に近く、たたただ間取りのいじくり回しです。階高が1.5倍あるマンション、2階層をもち吹抜けのあるマンション、スキップフロアのマンションが登場しましたが、レア・ケースです。同じ住戸が大量に集まる大型マンションや超高層マンションは、奴隷マンションの最たるものです。
■奴隷ハウス
ハウスメーカーの標準廉価版タイプや安い分譲住宅は、必ず総2階です。上下階とも天井高2.4mほどの部屋が並びます。1階の一部が張り出すタイプもあります。これらは、典型的な奴隷ハウスです。部屋の数と並びの違いだけです。最近でこそ差別化を計り、また高級仕様で吹抜けを設ける場合もあります。が、見た目をひくだけで、基本的には奴隷住宅です。この30年の脳科学的な知見をほとんど無視しています。

■“創造性”を育む解放住宅
枠を超える種子は、高さ2.4mの箱では生まれません。伸びやかな空間、上下の動きを採り入れる、自然の移り変わりを感じるなど変化の多様性が要ります。自由な発想で枠を超えられ、“創造性”を育む住宅を解放マンション・解放ハウスと呼びます。
これからはAI(人口知能)やロボットの急激な普及で単純作業が減り、創造性が求められる時代に突入するといわれます。“創造”というと、苦手としりごみする人がいるかも知れません。暮らしの“創意工夫”です。料理・掃除・スポーツから、起業、ノーベル賞級の発見まで含みます。個々にしかない力を表現することです。何かを成し遂げたい人に役立つ力です。
空間の貧弱な住まいで育った人たちが中堅~主役となった時代が、失われた10年以降です。世界経済の動きや教育の在り方が大きいのですが、“しもべ”を育む奴隷住宅が蔓延し、そこで育った世代と重なります。これからは解放ハウスにして、“創造性”の種子を育てていくことが緊急な課題です。■解放マンション
マンションのつくりを、①現在2.8~3.0mの階高を、4.2m以上にする、②2階建てとし緩やかな階段と吹抜けをもつ、③スキップフロアとし、緩やかな階段と吹抜けをもつ、④私が提案する上に凸な形で2層階吹抜けのバルコニー・居間をもつ、などとします。天井の高い半戸外のバルコニーは、アウトドア・リビングとなり、暮らしが拡がります。吹抜けの居間は、小上りや緩やかな階段を組み入れて刺激情報が膨らみます。外部から入ってくる変化も急増します。これらは、解放マンションとなる可能性があります。
■解放ハウス
戸建て住宅は、現在断熱性能のすぐれた住宅が標準になっています。天井の低い小部屋の集りではなく、吹抜けやオープンな間取りが容易になっています。著書“「できる」を育む家づくり”にある9つの条件をみたすことで、解放ハウスとなります。
解放住宅は、“大きな人を育て、大きな人生を歩む”住まいになります。

脇田 幸三

建築家 株式会社綜設計代表
岐阜市生れ 名古屋市在住
1989年11月綜設計設立
主に住宅・マンション・医院を設計
名古屋工業大学大学院修了
テーマ:“大きな人を育て、大きな人生を歩む”住まい
趣味:読書、朝のランニング