木構造|構造基準の抜け落ち

 建築の安全・耐久性を守るために建築基準法があります。大きな事故・トラブルや災害があると、基準の見直しがあります。古い基準では安全が確保されない場合が発生します。科学技術の進歩・新たな知見によるもので、国は補助金などで手助けしますが、新たな基準との差を埋めるのは建築主側です。建築基準法は、すべてを網羅していません。
 建築基準法の構造条文から、読み取りにくく、抜け落ちる事がらがあります。地震・台風・大雨に関係します。自然環境に関係するもの2点、地震力に対する考え方からくるもの2点あります。
■ 土砂災害について
 土砂災害には、急傾斜地(傾斜度30°以上)の崩壊、地滑り、土石流などがあります。自然現象なのですが、地震や大雨による山地のゆるみが引き金になる場合が多いのです。
 2000年に土砂災害防止法(土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律)が公布されました。土砂災害危険箇所(イエローゾーン)と土砂災害警戒区域(レッドゾーン)が都道府県により指定され、ハザードマップとして閲覧できます。レッドゾーンでは、特定の開発行為に対する許可制、建築物の構造規制等があり、建築物の移転等の勧告があります。
 これから建てようとする場合は、事前チェックは有効です。が、すでに多くの家屋があり暮しもあるところも多く、後出しじゃんけんみたいで、当事者には辛いものです。

■ 軟弱地盤について
 地層の新しい扇状地の河口近く、海岸の埋め立て地、溜め池などの埋め立て地は、地盤として軟弱です。埋め立て地は100年前のもので、100日経過の地質相当と聞きます。
 軟弱地盤は、地震で液状化の恐れがあります。液状化のイメージは、こんな感じです。桶に水を入れ木片を並べて横から揺すると、木片の間から水が飛び出し、さらに揺すると木片が引っくり返ります。運よく建物は現状維持でも、家具は飛び、家屋は傾きます。さらに困ったことに、建物の回りから土砂が噴出し、道路がうねり、電柱が倒れ、埋設物の水道・下水が曲り切断したりします。生活の維持が困難になります。建築は地中の固い地層まで杭を打つか、軽微な建築なら地盤改良をして対策しますが、周りは大変なことになりそうです。
 古くからの市街地や集落は、経験的に良い地盤にあります。敷地から探す場合には、地層図やハザードマップを参考にします。すでに軟弱地盤に住んでいる場合は、災害時の非常用備蓄を多く確実にします。

■ 連続地震に対応していない耐震基準
 2016年の熊本地震は、前震(Mj6.5)のあと約28時間後に本震(Mj7.3)が襲い、大きな家屋被害となりました。現在の耐震基準は、一度の強い地震に対して人命を守ることを前提にしています。連続地震に対応していません
 政府の地震調査委員会が1923年から2016年6月までの地震を再調査したところ、M5以上で震源の深さが30キロ以内の内陸地震は563回あり、このうち前に発生した地震より規模が大きかった地震は35回(6%)あった、と報告あります。気象庁の本震―余震という表現が変更されました(最初の地震と同程度の地震に)。
 これからの大きな課題です。品確法に耐震等級1~3があります。耐震等級3は、建築基準法の1.5倍の地震力に対して倒壊・崩壊しない基準です。最初の地震で、0.8~0.7に耐力が落ちても、基準法の1.2~1.05倍の耐力です。とりあえず参考の数値になります。

■ 長周期地震動
 高層建築物や超高層建築物が最も揺れやすい地震動で、課題となっています。建築物には固有の振動があり、低層の建物は短く、高層の建物は長くなります。地震では、振動が共振して揺れを大きくします。巨大地震では長周期の波の振幅が増大し続けるため遠方まで届きます。また柔らかな堆積平野・盆地では効率的に伝わり、盆地の境界面で表面波に変換したあと変質して長周期となります。後者では、内陸の活断層が大きな地震を起こした時に生じるケースもあり、活断層直上の高層ビルや免震ビルが問題となります。
 現在も有効な対策はありません。高さ60Mを超えるようなマンションでは、家具の固定、数分間揺れるのでゆっくり揺れ始めたら待避行動をとることが重要です。

脇田 幸三

建築家 株式会社綜設計代表
岐阜市生れ 名古屋市在住
1989年11月綜設計設立
主に住宅・マンション・医院を設計
名古屋工業大学大学院修了
テーマ:“大きな人を育て、大きな人生を歩む”住まい
趣味:読書、朝のランニング