本の感想|日本史真髄

井沢元彦著 2018.08.08
逆説の日本史1~19を文庫本で読みました。これは、そのエッセンスもしくはダイジェスト。業界の講演会のあとで購入(1月11日)。バッサバッサ切って、おもしろい。
■官制の日本の歴史学の欠落
日本独自の宗教に基づく3つの信仰、1「ケガレ忌避信仰」、2「怨霊信仰」、3「言霊信仰」、日本人の行動を規制している3つの規範、4「和」、5「朱子学」、6「天皇」の無理解・無視が、日本歴史学を資料的事実の羅列に終わらせていると。時の流れでなく、キーワードから歴史をピックアップしています。改めて立ち止まった点が2つあります。
■日本人のルーツ
先史~古代の日本は、縄文時代→弥生時代へと移ったことは、数少ない遺跡等から類推されます。生活手段として狩猟採集から稲作への変換でした。分散する地方豪族を一つにした大和朝廷・天皇家の儀式は、稲作文化そのものです。取り巻きの貴族も同じ。獣を食し皮を利用するのは、縄文人の末裔です。関東・東北に追いやられた彼らの末裔が、武士団を構成したのでは、と著者。彼等には「ケガレ忌避信仰」も「怨霊信仰」もなし。天皇家が放棄した軍事や警察業務を代行して、権力を奪うことができた、と。
最初に渡来した縄文人が、北海道や沖縄に、あるいは山の民として残ったと思っていましたが、稲作不適格な山地や奥地に移住して暮らし、力をもって弥生人の用心棒になり、ついに弥生人を従わせた、という流れです。貴族と武士はまったく異質、納得です。皮革で生計をたててきた差別民といわれる人々も縄文人の直系なのかも知れません。
■日本人を蝕む「朱子学」という外来宗教、と著者
日本人の社会・道徳規範は、とても封建的。家父長的、男尊女卑、官尊民卑など、徳川幕藩体制265年の遺産、というより徳川体制415年と言った方がいいのかも。明治維新後151年、戦後74年も経済社会の大きな区切りだけど、人の奥底に眠る価値観は家康が推し進めた「朱子学」いまだに生きていると感じていまます。
朱子学は、南宋の朱熹が儒教を元につくった“儒教を過激にしたもの(著者)”。儒教・儒学は孔子が説いたものと長らく言われてきましたが、どうやら怪しい。孔子の思想や言動を詳しく記述した『論語』、儒教の基本経典は「五経」(詩経、書経、易経、礼経、春秋)。儒教が成立したのは、孔子の死から三百数十年も経った前漢王朝の武帝の時代で、王朝支配の体制教学として後編集されたものです。さらに厳格化した朱子学は、親・先祖が最優先事項。祖法を大事にし、時代に合わせて価値観を改変することができない、と著者。こんな考え方を家康に取り入るために勧めた、今でいう御用学者、最悪です。
世界は大航海時代に入って、船舶・航海技術、武器の開発が進む中、鎖国、技術の停止などの政策が、どんどん日本を後進国にして行きました。幕末には“貴穀賤金”思想が、外交を遅らせた、など実害がいっぱいです。
■やはり巣食ってます
ケガレ忌避信仰、怨霊信仰、言霊信仰、和、朱子学、天皇、どれも言われてみれば、行動・思考・心の奥に巣食ってます。くわばらくわばら!

脇田 幸三

建築家 株式会社綜設計代表
岐阜市生れ 名古屋市在住
1989年11月綜設計設立
主に住宅・マンション・医院を設計
名古屋工業大学大学院修了
テーマ:“大きな人を育て、大きな人生を歩む”住まい
趣味:読書、朝のランニング