奴隷住宅か解放住宅か|奴隷マンション-タワマン/成り上がり者好み?

■学生の時、ヨーロッパを歩きました。宿を確保して最初に出向いたのは、教会の塔やTVタワーなど街を見渡せる高い場所でした。研究室でそんな報告をすると、恩師曰く。「馬鹿と田舎者は高いところへ登りたがる」と。えっ!? まぁ、確かにお登りさんでした。田舎者は“煙”のもじりと知ったのは、あとのことです。
2000年ぐらいからか、タワーマンションの話題が増えました。昔を思い浮かべながら、“田舎者と成り上がり者のマンション”かと。
■高さに憧れる気持ちは、わかります。が、“タワマン=ステータス=成功者”みたいな風潮は、いただけません。眺望が唯一の売り、羨望の眼差しに優越感? 眺望の良さは、周りの視界を奪い、日影を遠くまで落としている。一人勝ちの雰囲気があります。

■アメリカの超高層マンション
超高層ビルなら、まずニューヨーク・マンハッタンを思い浮かべます。セントラル・パークを見下ろす超高級アパートメントが、1930年からツイン・タワー形式の5施設が完成しました。90年近く経過し、歴史的建築物として保存され、ステータスを備えています。第二次世界大戦後には、無数の高層アパートメントが林立しました。バルコニーを要しないため、オフィスビル、ホテルなど商業ビルと区別されず、スカイ・スクレーパーを形成しています。2015年には現在専用マンションとして世界で一番高い432 パーク・アベニュー/426m・89階が出現しました。
アメリカの近代建築発祥の地であるシカゴでも同様に超高層マンションがあります。
■ヨーロッパの超高層マンション
特に大陸では古い街並みを大事にして高さに制限があり、多くありません。主に大都市周辺部に民間開発の超高層が出現しています。
イギリスは、別の歩みがあります。第二次世界大戦後の復興期の公営住宅に高層住宅が採り入れられました。工業化構法、短工期、ブルータリズムにのるデザインなどと70年代以降の産業の衰退とインナーシティ問題が重なり、団地の荒廃が社会問題となりました。ゴミ放置・落書き、バンダリズム(暴力的な環境破壊)、教育・医療レベル低下、反社会的行為(アルコール中毒。薬物乱用など)、犯罪の多発し結果、10年余で高層住宅が取り壊されました。高層住宅が改修される団地再生もあるなか、2017年6月には公営住宅・24階建てのグレンフェル・タワーで設備・管理不備から火災が発生しました。一方、2000年以降、ロンドンで民間開発の超高層マンションがいくつも建設されています。
■急成長の世界
東半球では2000年以降高さとデザインを競って超高層マンションが出現しています。
特別なのは、ドバイです。原油を原資とし金融センターを立ち上げた人工都市です。世界一高い超高層ビル、ブルジュ・ハリファが有名です。居住区もふくむ複合商業施設です。専用マンションでは250mを超えるタワマンが16棟あり、さらに6棟が着工しています。
急成長のインドの商業・金融センターのムンバイには、250m以上の2つのタワマンがあり、25棟着工中です。
他に250mを超えるものに、釜山に7棟、ソウルに3棟、香港に4棟、メルボルン・ゴールドコーストに各1棟、マカティに1棟、モスクワに2棟、イスタンブールに1棟などがあります。
■タワマンの背景
世界をみると、まず巨額なお金が前提となります。商業の急成長、金融センター、原油など成金が見て取れます。そこで不動産・建設会社、投資会社、目立ちたがり屋のデザイナーが場をつくり、話題性を求め、おもしろい風変りなものを好むセレブたちが群がり、それに憧れる追っかけという図式でしょうか。
一方、タワマンに住む人たちは別世界の人たちでは、と想像できます。飛び抜けた資産を持つ層が、一時的な晴れの生活の場とするのでしょう。都心から1・2時間の郊外にも邸宅を持ち、海や山に別荘を持つ人たちでしょう。根っからの都市っ子で、年老いても利便性のよい都心マンションを選ぶ裕福な層もいるでしょうが。

脇田 幸三

建築家 株式会社綜設計代表
岐阜市生れ 名古屋市在住
1989年11月綜設計設立
主に住宅・マンション・医院を設計
名古屋工業大学大学院修了
テーマ:“大きな人を育て、大きな人生を歩む”住まい
趣味:読書、朝のランニング