奴隷住宅か解放住宅か|奴隷マンション-タワマン/住まいじゃない!

■子どもや家族の成長には
私は、“大きな人を育て、大きな人生を歩む”には、枠を超える可能性のある住まいがとても大切だと考えます。成長の家づくりのポイントとして9つあります。
(1)大きな朝を迎える・・・早起きは三文の得といい、朝はとても大事です。身体と脳のスイッチが入ります。朝日をくまなく巡らして、朝を迎えます。
(2)深い夜をすごす・・・寝る子は育つ、と言います。身体も脳も、です。大きな人物は夜にも育ちます。深い暗闇をつくる吹き抜けと、容積の大きな個室が欲しい。
(3)五感を誘う・・・五感や小脳は超多感な時期があり、感性や運動の基になり、とても重要な時期です。動きあるもの・生きものを傍らにおきます。
(4)ことばと個の世界が拡がる・・・ことばは、コミュニケーションと思考の手段で、家族と住まいが育みます。いつも家族が顔を合わせ触れ合い、ことばを交わすことが重要です。
(5)たて動きをする・・・脳への刺激は静より動が大。住まいで水平より上下の動きは、身
体的にも感覚的にも刺激的です。意図された段差は魅力的です。
(6)階段を主空間に・・・階段は、住まいで一番大きな垂直的な動きを伴います。楽しくリズミカルな階段を主空間におき、開放感や光と陰影の交錯など多様な変化をもたらします。
(7)伸びやかな吹き抜け・・・吹き抜けは、視線の多様の動きなど五感を刺激するとても有効な空間です。伸びやか、起ち上がる感じ、上向き感、気持ち大きく、思わず背伸び。
(8)家族が集い快を感じる・・・家族がともに喜び・快感をえる住まいは、記憶の核・マインドセットになり、成長と前向きな生き方に欠かせません。
(9)お気に入りの場・・・ひらめきや創意工夫のアイデアは、住まいが機会を提供する可能性が大きい。癒しの空間、お気に入り空間、気がゆるむ一人の空間に佇む時間が大切です。

マンションでは、9つのポイントすべてを網羅することは難しい面があります。しかし、タワマンで実現されていることは、東に窓をもつ住戸が(1)のみです。

■タワマンは子育てに向いていない
子育てファミリーには、まったく向いていません。空間が貧弱、自然に触れられない、外に出るのが大変など、まったく五感への刺激の少ない人工環境です。1階に共有の広い庭があれば朝夕に出て過ごし、土日には大きな公園や郊外に出かけるなどである程度解消はできるでしょうが、入り口での選択肢の間違いです。もちろん優秀な子どもは育つ可能性はありますが、枠を超える人になるのは困難でしょう。

■成功者には一時的寄港地
富裕層といっても、一代で築き上げた成功者でしょう。金持ちを目指して頑張った結果を、見せたいものです。フェラーリ、リシャール・ミル、センチュリオンのあとは、タワマンですか? 眺望の良さで、さらに青空を見上げますか、下界を見下ろしますか? 人・車・木々、すべて点です。夜景ですか、見てリラックスするのは? ここを外したら、もう並の高級マンションと変わりません。低い天井に新たな展開は見込めますか? 憧れやステータスで購入はわかります。でも、あくまで臨時の体験です。朝の日の出、夕方のサンセット、夜の月星に感動がなくなれば、タワマンは足枷になりそうです。さらに頑張ろうとしても、天井の低い何でもない空間は、もうこれでいい、十分だと語りかけます。

すごろくの上りと考え、余生を送るのだったら答えの一つかも知れません。もし、事業のさらなる拡大、社会的な高みを目指すなら、タワマンは不適切です。

■タワマンには工夫がない
マンハッタンのアパートメントには、バスケットボールできるほどの天井高を持つタイプがあると聞きます。日本のタワマンのリッチさは、眺望以外で何の工夫があるでしょう。敷地の足元には共有の緑が広がり、プールやスパがあることでしょうか。住戸そのものは、平面的な広さだけで、空間的な拡がりはありません。日影規制に捉われないなら、3m弱の階高を4mとか4.5mにする提案があっていいでしょう。家族や仲間とエンジョイできる空中庭園があっていいでしょう。
タワマン支持層は、士業のやり手、勝ち抜いた起業家、ビジネス・エリート、エンターテイメントの人気者、マネーゲームの勝ち組でしょうか。一棟まるごと富裕層向けならおもしろそうですが、現状は淋しいものです。

脇田 幸三

建築家 株式会社綜設計代表
岐阜市生れ 名古屋市在住
1989年11月綜設計設立
主に住宅・マンション・医院を設計
名古屋工業大学大学院修了
テーマ:“大きな人を育て、大きな人生を歩む”住まい
趣味:読書、朝のランニング