本の感想|母脳――母と子のための脳科学

黒川伊保子著 ポプラ社 2017.11.15
男性にとって読んだらいい本か。子育て中の現役で、妻子を少しでも応援したい人には、きっと役に立ちます。子育てが何十年も前だった私みたいだと、反省しきりの本です。孫育てのため、子供たちへのアドバイスにはいいかも知れません。
女性、特に子育て奮闘中や子育て予備軍には、いい本です。ただ、偏差値競争に勝ち抜き、親のポジションを守るとか、既存社会の上層をめざす子育てを望む人には、苛立たしいかもしれません。インテリのできる女に反発しかない人にも向きません。また、多分に息子自慢があちこちにあります。具体的で面白いと微笑んで流せる人でないと、向きません、きっと。

著者は、1983年春からコンピュータ・メーカーに就職し、最先端の脳科学を学びながらAI開発に携わり、1991年夏に長男を授かる。“ふと「今、赤ちゃんを抱いている日本中のお母さんの中で、私が一番、脳に詳しいんじゃないだろうか」と思いついた。そこで、野望に燃えたのである。――この子を天才脳に育てよう!”と。“私は息子を理系の天才脳にそだてるつもりだったので、・・・”26年経って著者は、“私の子育てが成功したかどうか、まだわからない。”と。“本当の成功は、彼自身が幸福な壮年をむけえてくれるかどうかだから。”

子育てをしてみると、乳幼児のとき我が子は天才じゃないかな! と思うことがままあります。すぐに人並みってことがわかりますが。子育てには二つの方法があると、と。一つは、幼少期から子どもに親が何をさせたいかに、子どもの光る才を見出して育児・教育エネルギーを傾ける。もう一つは、子どもの向き不向きが早期に見いだせない場合(ほとんどの親です)、可能性を拡げるべく幅広くエネルギーを注ぐ。ただ、脳はすべてを望んでも無理なので、いつも子どもと親の選択があります。どちらも母親・両親の思い込みでいいのだけど。著者は、後者を実行。

一番いいと思ったのは、“子育てのキャンペーンコピー”です。どんな人になって欲しいかを一言でわかりやすく表現し、それを乳児から青年まで語りかけていく。動機づけをしっかりしていくのです。著者の場合は、“母も惚れるいい男”です。これは、使えます。“いい男”がミソ。対極がカッコ悪いこと。女の子なら“・・・いい女”ですか?
もう一つ。小学校に入学時、勉強を始めるにあたって、なぜ勉強するかを大人のことばで語ったことです。理解できるか別にして、身構えを伝える。著者の場合は、“社会での問題解決のため“と。僕も、子どもに何度もなぜ勉強するの? 大学へ行くの? と聞かれました。何回目かに3項目を張り紙しました。以降、張り紙を見て!と。
子育ては楽しく意義深い。でも、誰しも仕事への情熱と重なる時期なのです。時間が思うようにとれません。今思うと、失敗ばかり。戦略が必要です。この本は、すごく参考になります。

脇田 幸三

建築家 株式会社綜設計代表
岐阜市生れ 名古屋市在住
1989年11月綜設計設立
主に住宅・マンション・医院を設計
名古屋工業大学大学院修了
テーマ:“大きな人を育て、大きな人生を歩む”住まい
趣味:読書、朝のランニング