子育て住宅I可能性を拡げる家づくり/①大きな朝を迎える

□プロローグ(共通)
天井高2m40cmほどの部屋が並ぶ総2階住宅やマンションで育つと、枠を超えられない、という共通点を持ちます。時代・社会の手の平で踊らされ、会社・組織や既成の価値観の従者になり、思いが、考えが、想像力が枠を超えるのは難しいのです。
自由な発想で枠を超えられ“創造性”を育むには、住まいに伸びやかな空間、上下の動きや自然の移ろいを採り入れる、など多様な変化が要ります。“成長”を育む家は、個の可能性を拡げ、輝きの種子をもたらします。

■大きな朝を迎える・・・朝の光をくまなく巡らす
朝は、一日のスタートです。朝の太陽の光は、身体と脳に2つの意味でとても重要です。一つは、朝の光は身体の生体リズムを整えます。睡眠と覚醒のサイクル、ホルモン分泌、体温と血圧の調節、代謝の制御など生理機能を担う体内時計をリセットし、“おはよう!”で1日が始まります。もう一つは、朝の光で神経伝達物質セロトニン(心身や自律神経を調節する)の分泌量が増えます。遠く東の空から登る直射光と散乱光に反応します。ストレス解消や美容にもよく、「幸せホルモン」と言われるセロトニンで、元気・やる気が起きてきます。東の朝の光を日々浴びる暮らしがとても重要です。

■朝の光の特徴(季節と方位・高度・日射量)
太陽の動きは、図のように1年を通し大きく動きます。朝の陽射しが弱くなる冬季に合せ、東から東南東の直射日光を採り入れる工夫をします。
日の出の時間は、意外と幅があります。日本の人口重心で見てみます。日の出は、最も早いのが夏至の1週間ほど前の4時34分、最も遅いのが冬至から半月後の7時00分で、2時間26分違います。日の出とともに起きるという生活は、実際には難しそうです。

日の出方向も幅があります。夏至近くは、真東から北へ30.2度、冬至近くは南へ28.4度で、春分・秋分はほぼ真東です。約60度の間を行ったり来たりします。
南中時の一番高い太陽高度は、夏至で77.8度、冬至で31度です。真南に向って立つと太陽の動きは、夏は東後方から昇り頭上から西後方に沈み、冬は東前方から昇り南方から西前方に沈む感じです。
光は、明るさと共に熱エネルギーをもたらします。住まいの中では夏季の熱射は避けたく、冬季は導入したいものです。建築では、屋根と壁で日射=熱射を受け止めます。夏季の東西窓から入る太陽は、とても暑いことは実感します。

■朝の光の誘導と遮蔽
日射は、直射日光と大気の分子や雲粒で乱反射された散乱光から成ります。夏期の日射は強く、朝の散乱光だけでも明るく、四方の窓から導入できます。東の窓は、直射日光を避けるようにします。冬期は日射が弱く、直射日光がとても大事になります。朝の光は東の窓が主となり、東南東から東南の直射日光を採り入れる工夫をします。

■優先したい部屋
間取りで最優先したいのが、朝一番で身体が動き、頭が働き始める台所と朝ご飯の場です。台所は、東側が一番です。お母さんの明るさが家庭には欠かせません。みんなが顔を合わせて集う食堂は、1階の東面か東南のコーナーにします。朝の光の力と朝ご飯の力を得て、学校や職場へ向かいます。

■朝の光の寝室への誘導
また、朝の光を浴びて目覚めるのは気持ちいいものです。寝室は、西と北西に採ることはよくあります。この場合には吹き抜けや2階ホールに天窓を、小屋裏の妻壁の棟近くに高窓を設けて採り入れ、充満する朝日を屋内窓やドア欄間から間接的に入れます。ホールに出た時や吹き抜けの階段を下りる時にも、朝を感じます。あるいは寝室自体に天窓や高窓を採用します。

脇田 幸三

建築家 株式会社綜設計代表
岐阜市生れ 名古屋市在住
1989年11月綜設計設立
主に住宅・マンション・医院を設計
名古屋工業大学大学院修了
テーマ:“大きな人を育て、大きな人生を歩む”住まい
趣味:読書、朝のランニング