木の家|山が見える家づくり

■産地がわかる
工業製品は、メーカー・工場がわかれば、どこの国のものかわかります。が、部品の一つ一つとなると一般消費者には、見えにくいです。アイ・フォーンは、多くの日本の部品を使い、中国で組立、アップル製品として販売されます。
全ての加工食品の重量割合上位1位の原材料について原料原産地の表示が必要となりました。微量の調味料や添加剤は、まったくわかりませんが。
一番身近な生鮮食品は、原料原産地表示が義務化されています。スーパーで選択肢があれば、産地と価格を比べて購入します。
住宅は、どうでしょうか? 工業製品を多用して、機器・部品のメーカーは表示されます。が、主要な構造材や仕上げ材の産地は、まず分かりません。ハウス・メーカー、建売りは、まったく不明です。国土の0.125%の所有林を持つ住友林業でさえも、です。柱・梁を隠す造り=大壁構造ですから、意味ないのでしょう。安く・効率的に、ということです。大手ビルダーや中小の工務店、あるいは設計者がかかわる住宅も同様です。出所不明の木造住宅が蔓延しています。
ここ10年ほど、ようやく林野庁による県産材の利用促進がはかられてきました。また国交省の地域型住宅グリーン化事業では、地域木材を過半利用する場合に補助金を付加して、各県産材の促進を後押ししています。地域工務店の取組みが進んでいます。

■住まいの歴史は、引っ越しから?
住宅を新築する場合、家族の関わり・思い出はどこから始まるでしょうか? 建売りの場合は、引っ越しからです。ハウス・メーカー・大手ビルダーの場合は、購入交渉で決まれば地鎮祭そして引っ越しからです。工事の過程は、見せたくないようです。工務店の場合は、工事過程の現場打合せが何度か入ります。設計打合せ→地鎮祭→現場確認→引っ越しを経て、暮らしが始まります。
これって、寂しいですね。特に、木造住宅では。柱・梁が、単なる名無しの部材扱いです。1本1本、山で何十年も風雪に耐えてきたのに。

■住まいの歴史は、山から始まる
住宅で構造材=仕上げ材となる柱は、樹齢40~60年以上の桧・杉、通し柱となると60~80年以上の桧・杉です。梁なら樹齢60~80年以上の杉です。節無しに拘れば、さらに樹齢が高いものになりますが、不要です。
築後触れて見上げる桧・杉が、60~80年以上の経験を積んでいます。時代の空気を吸い、何度も何度も台風や大雪をやり過ごしてきています。
住宅の概要が決まったところで、家族みんなで伐採予定地の山を見に行きます。住宅予定地の流域の山、ふる里の山、お気に入りの山を設計者や工務店に探してもらいます。流れは、伐採予定地→丸太市場→数量確保→製材所→乾燥→手刻み土場・プレカット工場→工事現場、です。もちろん山の林家に会う、丸太市場や製材所の見学など生産者の顔を確認できます。山でお気に入りの立木が見つかれば、マーキングして記念撮影します。
すると、住まいの歴史が、60~80年以上さかのぼります。家により愛着が湧きます。建築主家族が山に出かける手間、山側や工務店の仕分け作業などプラスの労力は発生します。が、プラスの工事費は僅かです。

■贅沢なつくり
木造住宅なら、柱・梁を現しで使い(=真壁構造)、それらの木々の育った山まで想像できる。住まいが、うーんと味わいと深みが増します。少しの手間と時間をかけることにより、どこにもない贅沢な住まいになります。

脇田 幸三

建築家 株式会社綜設計代表
岐阜市生れ 名古屋市在住
1989年11月綜設計設立
主に住宅・マンション・医院を設計
名古屋工業大学大学院修了
テーマ:“大きな人を育て、大きな人生を歩む”住まい
趣味:読書、朝のランニング