本の感想|マンションは日本人を幸せにするか

榊淳司著 集英社新書 2017.04.19
マンション関連で著者のネット記事をいくつか読みました。業界寄りの記事が多い中、エンドユーザー側に配慮あるように思いました。紹介に著作があり、取り寄せました。

■デベロッパーや不動産業界には、辛辣な意見が書いてあります。彼らがどこかで斜め読みすれば、多分冷笑でおしまい。これからマンションを買う人には、現実を見せてもらって勉強になります。現にマンションに住んでいる人は、納得しながら途方に暮れるかも?都市部では過半の住宅形式のマンションです。問題が多すぎて、先行きが思いやられます。
マンションに住んで幸せか? 住めば都。ほとんど人は、Yes と答えるでしょう。収入と見合わせて良しとするでしょうし、他の住まいを想像できないから。それでも著者は、問いたいのですね、このままでいいのかと。以下、概要です。

■大きな問題点1・・・管理組合
管理組合は民主的に運営されることは稀。管理会社主導である。管理組合は、役員をやりたくない責任逃れの組合員が多く、逃げの体制にある。
管理組合と管理会社が利益相反である事実。管理会社は、多くがデベロッパーの子会社であり、儲け優先である。長期修繕工事では、管理組合が「ボラれている」ケースが多い。

■大きな問題点2・・・儲けの対象でしかないマンション
長谷工コーポレーションが大手とは知っていましたが、実績約1割を供給して日本一番とは。30年内容変わらず「長谷工プロジェクト」が、郊外大規模マンションで今でも展開している。
客に「買わせる」のがマンション業界。客を「ハメ込む」・「殺す」事例。大手デベロッパーといえども、購入者はカモで、儲けのみ前提に動いている。
不動産業界の不透明性と悪徳習慣の存在。

■大きな問題点3・・・繰り返される不動産バルブ
“バブルにおいて価格が上昇するのは常に不動産。そして、株価。ちょっとだ
け人件費。・・・いわゆる「物価」は上がってもいないのだ。“ と。
賃貸需要は常に実需であり、賃料はバブル化しない、と。
そうですね。建築・不動産業界は、特殊ですね。

■大きな問題点4・・・不完全な住まい
・停電すると水も使えなくなる/タワーマンションで地震に遭うとEVは?
・電力なしには暮らせない
・地震による心配事・・・データ改竄のあった杭工事を信用できるか?

■大きな問題点5・・・健康を損なうか?
・体温を奪うコンクリートという素材
・アレルギーとの関連が指摘される
・高層住宅での子育ては危険?
・タワーマンションに潜む健康問題
・心停止の患者、25階建て以上で生存率ゼロ
・タワーマンションの階層ヒエラルキー

■大きな問題点6・・・増え続けるストック
・老朽化、廃墟化、建替え不可、区分所有法の限界、管理費未納

■エピローグ・・・二つのマンションの奇跡

著者が望ましいと思うマンションの姿です。一つは、高知市の沢田マンションで5F、70戸。夫妻のセルフメイドで、同じような住戸が重なるマンションではなく、すべての部屋を異なったものにしたマンションです。住戸に一つ一つに個性があればと。
もう一つは、東京都港区の白金タワーで、42F、581戸。管理組合が民主的・積極的に運営されている事例です。築30年の時(2035年)には「管理を磨いてヴィンテージマンションと呼ばれる存在にする」という明確なヴィジョンを持つという。

■私が思う最大の課題
上記2例は、確かに明るい希望の灯かも知れません。が、マンション自体の形式―階高3mの住戸を積み重ねるーについては、何も触れていません。今のマンションは、高さ方向の拡がりが全くありません。枠を超える可能性をもつ次の世代を育てるのは、難しいと思います。30年、50年先を思うなら、欠かせない視点です。

脇田 幸三

建築家 株式会社綜設計代表
岐阜市生れ 名古屋市在住
1989年11月綜設計設立
主に住宅・マンション・医院を設計
名古屋工業大学大学院修了
テーマ:“大きな人を育て、大きな人生を歩む”住まい
趣味:読書、朝のランニング