子育て住宅|可能性を拡げる家づくり/③五感を誘う

□プロローグ(共通)
天井高2m40cmほどの部屋が並ぶ総2階住宅やマンションで育つと、枠を超えられない、という共通点を持ちます。時代・社会の手の平で踊らされ、会社・組織や既成の価値観の従者になり、思いが、考えが、想像力が枠を超えるのは難しいのです。
自由な発想で枠を超えられ“創造性”を育むには、住まいに伸びやかな空間、上下の動きや自然の移ろいを採り入れる、など多様な変化が要ります。“成長”を育む家は、個の可能性を拡げ、輝きの種子をもたらします。

■五感を誘う・・・動きのあるもの・生きものが傍らに
子どもの成長とその後の成熟に大事なことです。胎児・乳児・幼児・子どもの若い脳は、好奇心旺盛で五感への刺激をいっぱい求めます。
完成時の住まいが素敵であっても慣れてくると、単なる生活の場になってしまいます。人の感覚は、慣れてくると反応しなくなります。脳は、刺激や変化を求めます。神経ネットワークは、好奇心や刺激でいつまでも成熟します。暮らしの新鮮さは、五感情報にも変化があることで住まいが機会を提供します。発見の喜びや楽しい雰囲気は、気持ちを前向きにします。形や素材や空間は不動であっても、生活のなかの微妙な変化が生活に潤いをもたらします。目に見える変化を採り入れて住まいが息づくのは、つくるときの思いと住み手の働きかけです。動きのある自然を取り込み、生命力あるものを傍らに置くことです。

■太陽光と陰影
太陽光は、屋根で発電と温水に利用され、屋内へは明るさ・熱をもたらします。日々時間により、角度・方向・強さを変えて射し込みます。夜明けと夕暮れのしだいに変わる様は感動的です。また空模様と季節を強く感じます。陰影は柔らかな表情から濃いコントラストまで移ろいます。上方からの光は、彼方からのメッセージに思えます。また住まいの外部のつくりや樹木は、陰影の模様を多様にします。

■緑の恵みと空の動き
窓から庭の茂る緑が風にそよぎ、空の動きがわかるのは、心地よく感じます。樹木1本でも、窓の形による額縁効果で見え方が違います。個室それぞれからの緑の景色が難しい場合でも、居間・食堂からの眺めは確保したいものです。
また窓から見える空は、空模様と季節を知らせてくれます。青味の程度や深さ変える空、形を変え流れる雲、朝焼け・夕焼け、月の満ち欠け、星空が見えます。そして、窓越しに曇天、雨風の強弱、霜雪など、外の様子を知ります。

■窓を開ければ
風が吹き抜け・舞い、屋内をリフレッシュします。早春の乾いたまだ冷たい空気、暖かな春爛漫の風、新緑の清清しい風、湿気っぽい肌にまとわりつく梅雨の風、木陰から抜ける汗を拭う風、もの憂い晩夏の午後の風、さわやかな初秋の涼風、深い空に誘われそうな秋風、木の葉が舞う身が引き締まる風、小春日の気がゆるむ穏やかな風、木枯らし舞う肌を刺す北風、など全身で感じます。
香りが、運ばれてきます。音は、遠慮がないところがあります。

■直に触れるものは自然素材
床材や床近くの素材は、自然素材に限ります。匂い、吸湿感や温もりや柔らかさといった自然の感触が五感を刺激します。日本の住まいは、もともと木(柱・梁、床・壁・天井の板)、土(土間の叩き・土壁・瓦)、紙(障子・襖)、植物(畳表・藁・茅・葦など)の材料でつくられてきました。高温多湿の風土と産出する材料で選んできました。

脇田 幸三

建築家 株式会社綜設計代表
岐阜市生れ 名古屋市在住
1989年11月綜設計設立
主に住宅・マンション・医院を設計
名古屋工業大学大学院修了
テーマ:“大きな人を育て、大きな人生を歩む”住まい
趣味:読書、朝のランニング