子育て住宅|可能性を拡げる家づくり/⑤たて動きをする

□プロローグ(共通)
天井高2m40cmほどの部屋が並ぶ総2階住宅やマンションで育つと、枠を超えられない、という共通点を持ちます。時代・社会の手の平で踊らされ、会社・組織や既成の価値観の従者になり、思いが、考えが、想像力が枠を超えるのは難しいのです。
自由な発想で枠を超えられ“創造性”を育むには、住まいに伸びやかな空間、上下の動きや自然の移ろいを採り入れる、など多様な変化が要ります。“成長”を育む家は、個の可能性を拡げ、輝きの種子をもたらします。

■運動制御と空間認識
子どもの成長とその後の成熟に大事なことに、身体運動と空間認識の体験があります。自然の中での視覚・聴覚など五感を使って空間を知覚し、状況を的確に掴んで筋肉に指令をだす遊びや運動は、神経ネットワークを発達させ、スポーツと学力の基になります。いろいろな動きと多様な空間経験は、脳を活性化します。住まいにあっては、たて動きを導入します。

■床レベルに差を設ける
住まいの中から段差をなくすバリアフリーが大事にされています。健常者でも備えは大事です。でも1階の床はとにかくフラットにしておけばいい、というのは安易です。
段差は、日々の繰り返しで身体が鍛えられます。また特に幼児や子どもにとって、全身を使い、同時に視線移動を伴い、体の発達や脳の成長にとても有利になります。そして段差が行為の転換・切り替えになり、気持ちも変わります。アクセントになり暮らしが豊かになります。意図した段差は、床レベルに差を設け、上下=たて動きをするものです。位置は、視線移動が活発になる吹抜けとか半戸外とか大きな空間にあるのが有効です。とはいえ、最小限の段差のないエリア、広めの通路、手摺の下地の用意など考えておかねばなりませんが。

■土間を活かす
土間を大きくとることは、長い小上がりや縁をつけることで、子どもには格好の遊び場になり、コミュニケーションの場になります。
①広い玄関土間: ゆとりの玄関とし、接客に好都合です。椅子・テーブルがあれば、ゆっくり話ができます。応接間を兼ねる感じです。また趣味のスポーツ自転車やボート・カヌーを保管展示ができます。
②玄関に連なる縁側土間: 居間や食堂の庭・テラス側に土間を設け、玄関とつなげます。広縁風の土間、あるいは外のテラスと一体となる屋内テラスです。小上がりはベンチになります。観葉植物を置いたり、もの干しにもなります。
③通り土間: 住まいの表と裏を縦断し、後の庭を暮らしに取り込みます。土間を挟んで親と子ども世帯なら、緩衝帯となって同居できます。仕事場と住まいの間に土間があれば、区分けがはっきりして、気持ちが切り替わります。

■床に高さ違いを設ける
伝統的な民家は、高い床に対して土間に沓脱ぎ石・小上がり・縁・大きな框を設けていました。1階の床に高さ違いを設けて、空間に変化をもたらします。
①小上がり: 茶の間、掘り座卓付の食堂、客間、仏間、お茶室、畳コーナーなどがあります。居間の一部や隣にあると、一体的に使えます。
②下がり床・上がり床: 居間やその一部、二つ目の食堂や家族室の床を少し下げたり・上げたりします。落ち着きと親密さなら下がり床に、舞台の感じなら上がり床にします。
③作り付けのベンチ・縁台: 居間や食堂のコーナーの窓・壁際にベンチを置きます。奥行きがあればごろ寝できます。また、可動の縁台を空間の仕切りや長椅子に用います。乗り越え遊
びをし、ゲームをし、机替わりにし、ごろ寝もします。下部は収納にします。
④大框で仕切る: 雰囲気を改めるのに15~30cmの段差を設けます。縁側と和室や居間の間、和と洋の間に入れ、空間を変えます。大きな材がアクセントになります。

■庭との行き来
伝統的な日本の住まいは開放的で、内外が一体となっていました。屋内の生活が外に張り出し、外の環境が内部に飛び込み、内外の空間がお互いに入り込んでいました。人は小さな内外の床レベル差を行き来し、視線を遠近・高低に送ります。
①深い庇に掃き出し窓: 居間・食堂・広縁の窓に沓脱ぎ石があって、直接庭かテラスを挟んで庭に出ます。窓外に濡れ縁やウッドデッキを設けるのもいいです。
②軒を設けて雨天の利用も: 柱を建てて軒庇を大きくすれば、雨の日も活用できます。奥の部屋が暗くなるとすれば、透明な屋根材とします。ウッドデッキで部屋の床と同じ高さにすると屋内が拡がります。テラスやウッドデッキが外の居間になります。
③別棟で張り出す: 庭の中や庭を覆う形で雨除けをつくります。ベンチ・テーブルを用意すればお茶やブランチに、バーベキューも雨天決行できます。サービスヤードでは、物干しや作業場になります。

脇田 幸三

建築家 株式会社綜設計代表
岐阜市生れ 名古屋市在住
1989年11月綜設計設立
主に住宅・マンション・医院を設計
名古屋工業大学大学院修了
テーマ:“大きな人を育て、大きな人生を歩む”住まい
趣味:読書、朝のランニング