子育て住宅|変化の少ない家なら/⑤たて動きをする

□プロローグ(共通)
天井高2m40cmほどの部屋が並ぶ総2階住宅やマンションで育つと、枠を超えられない、という共通点を持ちます。時代・社会の手の平で踊らされ、会社・組織や既成の価値観の従者になり、思いが、考えが、想像力が枠を超えるのは難しいのです。
自由な発想で枠を超えられ“創造性”を育むには、住まいに伸びやかな空間、上下の動きや自然の移ろいを採り入れる、など多様な変化が要ります。“成長”を育む家は、個の可能性を拡げ、輝きの種子をもたらします。

■体が楽=単調な毎日=脳刺激が少ない
玄関を上がると、フラットな床、2m40~50cmの天井が続く住宅が圧倒的です。横移動だけで、楽です。床に散らかったおもちゃを踏んづけたり、急ぐとき家具に当たってイラツクぐらいです。庭・バルコニーに出る機会は、お母さんが物干し・ゴミ出しするくらいです。
軽い負荷を感じる環境は、いいものです。刺激法則「少量の毒は刺激作用がある」というものがあります。弱い刺激で神経機能を喚起し、中程度の刺激で神経機能を興奮させ、強い刺激は神経機能を抑制し、最強度の刺激で静止します。
床の高さが違って空間に変化がつき、場が移って改まる様相になります。意図された段差は、幼児にとっては全身運動と視線移動があり、家族には軽い運動刺激になります。

■たて動きの採り入れ
住まいはただ身体を休めるだけでなく、活動性を暮らしに採り入れます。身体を動かしてきた進化の先に、ヒトはことばや思考や創造性を持ちました。五感と身体への情報刺激を大切にしたいものです。
住まいのなかで身体に負荷がかかる移動は、椅子に座る・椅子から立つ、床から立ち上がる・床に座る、ベッドから起きる・ベッドに横たわるなどがあります。これに30~45cmの段差・床レベル差を設け、たて動きを加えると、身体・五感への刺激が変わります。足と膝に力をいれて一気に動作し、次の行動に移ります。運動量は少ないのですが、腰・背骨・脳幹へと刺激が走ります。瞬時に視点の高さが移動し、見る世界が違ってきます。日々の光や影、季節の風景の変化に気づきます。

■室内は家具の工夫
幼児がハイハイ・つかまり立ち・伝い歩きから、すくっと立上がり歩き始めるのは、感動ものです。そのあと膝を求めソファや椅子に全身を使ってよじ登ってきます。視線が回転し、高さ移動します。ベッドにもよじ登ります。柔らかさ・硬さ・高さを変えた椅子等があれば、子どもの刺激になります。広いベンチ・縁台のような上がって遊べる家具も良さそうです。2m40~50cmの天井でも、子どもには目の高さが変ることで、空間の変化を感じます。床での食事や遊びを時々採り入れることもいいものです。また、2段ベッドを一人で使い、高さの違いを体験するのもいいかも知れません。

■内外の連携
戸建て住宅なら新築後、庭の手直しは用意です。掃出し窓外にウッドデッキや濡縁をもうけ、居間・食堂の延長にして、さらに庭に近づきやすくします。庭を日常的な動きの中に入れ、たて動きを頻繁にします。テラス・庭に草花を置き、庭木を四季に合わせたつくりに、楽しみを増やします。
マンションでは、バルコニーの奥行きが小さく、暮らしの延長は難しいです。それでもプランターで草花を楽しみ、外気を感じるため、僅かなたて動きがあります。

■外へ出よう
住まいの中では、限界があります。普段は朝、近所の公園に行きます。多分家事に忙しいお母さんじゃなくて、お父さんの散歩・運動も兼ねます。小さな起伏の昇り降り、段差を行ったり来たりします。地面の見切りに使われる5~15cmのレンガや縁石に沿って、左右の足を交差して歩くのも方法です。意外とリズム感と集中力が要ります。屋外の樹木の下で、足元に気を使いながら、木々や空を見て、身体を動かすのは、五感へのいろいろな刺激になります。
週末には、ママ友やパパ友などの家族と一緒に、大きな公園や緑地に出かけます。自然のなか、飛んだり跳ねたり、友だちと遊ぶのはとてもいい“たて動き”を伴います。

脇田 幸三

建築家 株式会社綜設計代表
岐阜市生れ 名古屋市在住
1989年11月綜設計設立
主に住宅・マンション・医院を設計
名古屋工業大学大学院修了
テーマ:“大きな人を育て、大きな人生を歩む”住まい
趣味:読書、朝のランニング