子育て住宅|可能性を拡げる家づくり/⑥階段を居間吹抜けに

□プロローグ(共通)
天井高2m40cmほどの部屋が並ぶ総2階住宅やマンションで育つと、枠を超えられない、という共通点を持ちます。時代・社会の手の平で踊らされ、会社・組織や既成の価値観の従者になり、思いが、考えが、想像力が枠を超えるのは難しいのです。
自由な発想で枠を超えられ“創造性”を育むには、住まいに伸びやかな空間、上下の動きや自然の移ろいを採り入れる、など多様な変化が要ります。“成長”を育む家は、個の可能性を拡げ、輝きの種子をもたらします。

■階段の特異性
階段が住まいのなかに登場するのは、比較的新しいことです。江戸時代以前は、ほとんど平屋でした。明治以降、市街地に階段のある町屋や、蚕を飼うのに作業場的な2階のある農家に登場しました。それらの階段は、1・2階をつなぐ機能的な斜めの廊下でした。急な勾配で幅が狭く、隅っこに置かれる傾向がありました。
階段は、道具を使わず自力で階の間を垂直に移動する通路です。2階に穴を開け、吹き抜けの中に段を繰り返してつなぎます。住まいの中でユニークなつくりです。

■吹抜けのなかで生きる階段
登るとき、足元を確かめて上方を見上げながら期待感をもって歩を上げます。降りるときは、いくらか余裕をもって、周囲を見渡し・見下げながら、浮遊感を味わいながら軽やかに歩を下げます。上りは2階天井の形や上がりきった場の光景が、下りは拡がる吹き抜けの光景が魅力的だと、階段は楽しくなります。
垂直な移動は水平に比べて困難で、高さには少し怖さを感じます。真っ直ぐな直階段は、段を踏み外したときに危険という指摘があります。それ以上に考慮したいのが、高さの身体感覚と光景の展開です。

一気に登り切る階段より、途中で折れる階段や一休みできる踊り場がある方が、特に子どもには親しみがあって取っつきやすいものです。高さ移動で見られる光景の展開は、90度折れたり180度回転する方が、情景の変化が多くなります。垂直な空間移動と共に上下左右の視線移動が増え、視覚をより刺激します。
階段は、開放的な吹き抜けの中にあって、水平にも垂直にも拡がるのがいいでしょう。空間の変化を見て取れる、差し込む光や陰影や情景の移り変わりを見て取れるといいものです。デザイン的に美しく、アクセントになりリズムをもたらし、上り下りを楽しくしたいものです。1階と踊り場と2階が近くに感じ、遊び場や語らいの場にもなります。

■階段の形状
階段には、a)真っ直ぐな形状、踊り場を途中に設けb)L字に折れる形、c)U字に折り返かえす形、d)踊り場なしの螺旋状、があります。b)とc)は、階段そのものが子どもの遊び場になりやすそうです。踊り場が小上がりやベンチやステージになり、座り込んでぼんやりしたり、考え込んだり、本を読んだり、お話が始まります。踊場に本棚や収納が欲しくなります。
a)直階段: シンプルですっきりします、勾配はできるだけ緩くします。
b)L字に折れる階段: 吹き抜けを回るように設けます。
c)U字に折り返す階段: 吹き抜けを見渡すコーナーに採ります。
d)螺旋階段:丸い平面形状と四角い平面形状があります。大きくゆるやかに採ります。
e)スキップフロア階段: 階段はふつう1・2階の二つの床をつなぎますが、半階とかレベル差の違う幾つかの床をつなぐタイプがあります。

脇田 幸三

建築家 株式会社綜設計代表
岐阜市生れ 名古屋市在住
1989年11月綜設計設立
主に住宅・マンション・医院を設計
名古屋工業大学大学院修了
テーマ:“大きな人を育て、大きな人生を歩む”住まい
趣味:読書、朝のランニング