子育て住宅|可能性を拡げる家づくり/⑨お気に入りの場

□プロローグ(共通)
天井高2m40cmほどの部屋が並ぶ総2階住宅やマンションで育つと、枠を超えられない、という共通点を持ちます。時代・社会の手の平で踊らされ、会社・組織や既成の価値観の従者になり、思いが、考えが、想像力が枠を超えるのは難しいのです。
自由な発想で枠を超えられ“創造性”を育むには、住まいに伸びやかな空間、上下の動きや自然の移ろいを採り入れる、など多様な変化が要ります。“成長”を育む家は、個の可能性を拡げ、輝きの種子をもたらします。

■暮らしの創意工夫のきっかけ
「あっ、そうだ!」とか「ん?!」とふっとアイデアを思いつくことがあります。
無からは、何も生じません。意識されない蓄えられた情報がふっと顔を出し、組み合わさって姿を現すのでしょう。住まいが、創意工夫のきっかけや前向きな生き方のヒントを提供することがあります。ひらめきが浮かぶのは、どんな場合でしょうか。
まず夢の中で、次いでお風呂の中が多いでしょうか。ぼっとしているとき、歩いているとき、散歩しているとき、軽い運動をするとき、トイレに入っているとき、緑に目を休めるとき、コーヒーの香りに一息入れるとき、電車やバスの中で、などがありそうです。おしゃべりしているときに何かを思い起こすこともあります。

■ひらめく状態
眠って夢みるとき、外からの視覚など感覚情報がありません。浅い眠りの時、夢の中では思考や論理を働かせる脳の前頭前野が一部休んで、不安や喜びの感情中枢が活発に視覚的イメージを連想します。このとき思いもよらないアイデアのヒントに出合うようです。
お風呂は非日常の感覚があり、水の浮力で軽くなり、開放感があり、心身をゆるめ、リラックスします。お湯が肌をなでる気持ちよさ、水遊び感覚です。体感・触感が目覚め、嗅覚が働き、聴覚・視覚がぼんやりします。アイデアが横切ります。
ひらめくときは、緊張が解けて、気がゆるむときのようです。癒されているときです。難しい思考や論理的な頭のスイッチを切り、外からの情報を抑えているときです。防御を外してくつろいでいるとき、身構えずにほっとするときです。一人でいるときか、自分だけの世界に浸っているときです。

■ゆるむ空間
ひらめきやアイデアが浮かぶ住まいは、どんなつくりでしょうか。それは、ゆるむ空間・時を設けることです。お気に入り=マイ・フェイバリット空間・時間です。マイスペース、マイコーナー、マイスポット、マイルーム、マイタイムをつくることです。
その場合、家全体をひらめき空間するかと言えば、きっと必要ないでしょう。ひらめきの瞬間は、身の丈の空間があれば大丈夫です。背景が大事です。住まいが「安全で安心でき快適な場」になっていれば、あとは個人的な好みや習慣です。吹き抜けで遠くに思いを馳せる場とか、奥まった快適な席とか、違いはあるでしょう。どこで自分の世界に没頭できるかです。きっかけや道具が要るかもしれません。目を閉じて視覚を絶つ、音を遮断する耳栓、コーヒー・紅茶の香り、静かさの中に鳥のさえずりや肌をなでる風があるとか。個人の体験や思い巡らし方が関係しそうです。

脇田 幸三

建築家 株式会社綜設計代表
岐阜市生れ 名古屋市在住
1989年11月綜設計設立
主に住宅・マンション・医院を設計
名古屋工業大学大学院修了
テーマ:“大きな人を育て、大きな人生を歩む”住まい
趣味:読書、朝のランニング