子育て住宅|世襲・跡継-①生業

 ここでは、家とその周辺で、職業を子孫が承継する世襲・跡継を話題にします。幼児から親の仕事を見聞きし手伝い・訓練をうけ、成長とともに家業を継ぎます。家業を維持するか発展させるかは培われた型がありますが、跡を継ぐ個人にのしかかります。住まいとその周辺が舞台となり、家の造りが少なからず関係します。

 生きていくうえで、どんな職業に就くかは、一大事です。好奇心がかき立てられ、すきな対象で、可能性が開く仕事なら、楽しくて充実の人生となります。大多数の人が、人生の進路、
大学学部や職業選択に当り、大きな岐路に立ちます。
 150年前の江戸末までは、そんな悩みはなく、職業・階級がほぼ世襲で固定されていました。農林漁業が主要な産業である明治以降も、地方ではまだまだ世襲的でした。1950年以降の経済成長と社会の流動性は、事態がガラッと変わりました。圧倒的な人が、サラリーマン化し、親の職業を継ぐことは少数になりました。

■世襲の良し悪し
 親の仕事を生業として継ぐことは、良さそうです。家とその周りで、家内工業的に、生産の身近で親の働きをみて、傍らで仕事を覚え、身体に取り込んでいく。親子関係がうまくいき、親とその仕事が尊敬できるなら、素直に跡を継ぐようになります。
 とは言え、周りの同世代は自由に羽ばたいて自分の道を選んでいきます。きっと家業が、縛り・束縛に感じるでしょう。自らの可能性を試したでしょう。他に好きなことや強い好奇心があれば、なおさらです。技や工房や土地があっても、うまく生かせるかも不安です。コツコツの努力と経験と失敗の上に華が咲くと気づくのは、ずっと後からです。

■世襲が成り立つ条件
 仕事が世代を超えて続く条件は、いくつもあります。
a 食べていけ、儲けがあって次の世代に投資できること
b 時代を超えて仕事が継続できること・・・次の世代にも市場がある
c 社会的な評価があること・・・存続意義や尊敬がある
d 子どもの頃から仕事を学べる場とシステムがあること・・・家に教育と実践がある
e 魅力的な仕事であること・・・好奇心をかきたて、生き甲斐がある
 特にdが確立されていると、世襲がスムーズに進みそうです。

■世襲の多い分野
 大きく4つあると思います。
 まず生産手段を持つ農林漁業の分野です。特産品・新鮮野菜・果物を供給する広い田畑を持つ農家、100ヘクタール以上の山を持つ林家、漁業権と船を持つ漁家などがあります。天候に左右されるハードながら、食を守る仕事です。
 次に伝統的な文化・生活産業です。酒・味噌・醤油といった醸造業、漬物、和菓子など食業、西陣・ちりめんなど織物、陶磁器など焼き物、工芸品など地場産業です。家内工業から企業化している形態まで様々です。生活・嗜好の変化、人口減、国際化と舵取りが難しくなっています。
 そして、伝統芸能の世界です。歌舞伎・能といった演劇、日本舞踊、茶道・華道・書道など芸道、雅楽・邦楽など音曲といった分野です。
 最後に、職人です。建築界には、多種な職人がいます。大工・左官・庭師・表具師・建具・指物・畳・瓦・石屋・家具木工など。工芸品関連では、陶芸家、竹芸・漆・飾り職・蒔絵など手工業職人がいます。食では寿司職人、工業では、金属加工職人、鋳物職人、機械時計職人などがいます。

■継がれる内容の少ない世襲
 大学卒業後・実務に就いた後、親の職業を継ぐ職業がままあります。特権的な政治家・高級官僚・大学教授、自営業者の家業を継ぐ薬局・開業医などです。親の後姿を見て、偏差値競争に勝ち抜き、有名大学を出て、親の地位を継ぎます。親からの継承は、実質ほとんどありません。社会的な格差が拡がる現在、ますます増えそうな傾向です。

脇田 幸三

建築家 株式会社綜設計代表
岐阜市生れ 名古屋市在住
1989年11月綜設計設立
主に住宅・マンション・医院を設計
名古屋工業大学大学院修了
テーマ:“大きな人を育て、大きな人生を歩む”住まい
趣味:読書、朝のランニング