子育て住宅|世襲・跡継 ③成功例

■エンターテイメント
ローマ帝国の愚民政策を揶揄した「パンとサーカス」ということばがあります(詩人ユウェナリス/60~130年)。食糧と娯楽を無償で与え、市民を政治的無関心の状態にとどめるためでした。いつの時代も「パンとサーカス」は、欠かせません。国民栄誉賞がエンターテイメントから多く選ばれ、エンターテイナーとの話題づくりが政治利用されるのは、よく見られるシーンです。エンターテイメントは、好き嫌い・流行があり不安定に見えますが、社会の必需品です。

■世襲が常態の分野
息の長い歴史のある分野では、世襲が多く見られます。社会の浮沈にかかわらず、したたかに家系を守って生き残っているのは、伝統芸能の世界です。家元、宗家、一門などと呼ばれる系のトップ・グループは、支持層を持ち、次の世代を育て、家業を上手くつないできています。家を単位とし、血統を守っています。歌舞伎・能など演劇、日本舞踊、茶道・華道・書道など芸道、雅楽・邦楽など音曲の分野では、世襲が当たり前になっています。

■歌舞伎の世界
1603年頃まで遡る歌舞伎は、30ほどの一門、約300人の役者に支えられている。家柄と役柄に格付けありますが、それぞれの家では芸を守っています。一口に伝統を持つからというのではなく、世襲によって引き継ぐ家系と社会の支持があります。
a 市場:
クラシック鑑賞者が978万人(2011年)、国民の10%弱というデータがあります。生演奏、レコード・DVD、楽器演奏を楽しみます。演劇は生身の舞台が主戦場で、愛好者はぐっと減り、3%程度でしょうか。大きくはないものの確実な市場があります。
エンターテイメントが少なかった江戸時代には、非日常性で人気を得てきました。エンタメが多様化した現代では、伝統を売りにコアなファンを掴んでいます。役者がテレビなどマスコミへの露出を増やし話題性をつくり、企画運営会社がビジネスとして組立てて成功しています。外国人の観劇増が見込める一方、現代性の取り込みが課題でしょうか。

b 人材育成:
歌舞伎は、総合舞台芸術です。身のこなし・動き、表情、朗々とした口上・・・。肉体と五感と知性が要ります。これは、乳幼児から家庭とその周辺で育てられます。躾、芸事、舞台の様子など母親のサポートと父親・祖父の佇まい・言葉が大きいのでしょう。家での舞台の型鍛錬や出稽古も幼少から厳しいものでしょう。幼くしての初見世・初舞台が刺激となり、歌舞伎役者が育ちます。家族・家全体で家業として子を育てます。

c 舞台を使った世襲システム:
歌舞伎には、子ども役があります。2・3歳で初見世(顔見せ)があり、4・5歳で初舞台を踏みます。鍛錬を積んでの舞台で、満場の拍喝采は、ドーパミンがいっぱい出て最大限の快感をえて、この記憶が次のやる気を起こします。好奇心をかき立て、歌舞伎に魅力を感じます。そして出世魚のように、名を継ぐ襲名披露があります。役者は経験とともに円熟し、一生舞台に立ちます。
2つの大きなメリットがあります。一つは、愛好家の世代交代です。観劇は芸を楽しみますが、役者が同世代に近いとその成長とともに一生のファンになります。若い人は若い役者を愛好し、その親や子にも関心をもちます。愛好家が途切れることなく、継続します。
二つ目は、役者自身の成長です。実績を重ねた先代の名を継ぎます。負けまいと精進します。新しい名を客席からよばれ、自分でも名を反芻します。名前の生む言葉の感性が違い、身を震わせるでしょう。名と技が先代と馴染むには時間がかかり、それが芸の幅と奥行きを深めます。新たな自分らしさ・新たな歌舞伎に向かいます。

■ 世襲を望むなら
家族・家全体で家業を守り発展させるシステムが大事です。
a 家とその周辺で家業の練習ができる
b 家族全員が盛り立てる(父親は自分の世界構築に多忙も次世代にも時間を割く)
c 家業のすばらしさを幼児から見せ、体験をさせる
d 家業を発展させる工夫をし、次の世代に渡す
ことでしょうか。
世襲でなく、子どもになって欲しい職業があるとすれば、同様なフォローが大事です。
住まいは、可能性を開く住宅がいいですね!

脇田 幸三

建築家 株式会社綜設計代表
岐阜市生れ 名古屋市在住
1989年11月綜設計設立
主に住宅・マンション・医院を設計
名古屋工業大学大学院修了
テーマ:“大きな人を育て、大きな人生を歩む”住まい
趣味:読書、朝のランニング