省エネ住宅|断熱材と断熱法

■住宅の高断熱化は社会と時代の要請
最近まで断熱法として、充填断熱(内断熱)と外張り断熱(外断熱)が優劣を競っていました。断熱性能・施工・経済性・確実性・耐久性など、設計者・施工者の判断により選ばれました。気密と湿気対策が同時にとても大事ですが。
それは、どんな種類の断熱代を使うかということと連動します。
また、構法とも関係します。木造軸組構法では、耐震部材として斜め材=筋交いを使う構法と、合板=パネルを使う構法に二分されます。柱の間に斜め材が入ると、断熱材の充填がやや煩雑になります。
H28年省エネルギー基準からは、充填断熱あるいは外張り断熱だけでは難しくなります。単独だけでは、太陽光パネル面積と蓄電池容量を大きくすることになります。充填と外張りを併用する付加断熱が有利です。

■断熱材の使用実績の傾向
2017年フラット35仕様実態調査に拠ります。1999年と2017年の比較です。
1 グラスウール: 7% ⇒ 37.5%(50%)
2 ロックウール: 8% ⇒ 7.8%(57%)
3 セルローズファイバー: 1.8% ⇒ 4.5%(250%)
4 ポリスチレン・ポリエチレン: 2.8% ⇒ 7.0%(250%)
5 硬質ウレタン: 2.6% ⇒ 30.7%(1181%)
6 他: 3.3% ⇒ 12.4%(内、フェノール樹脂2.2%)

最近18年の間に、鉱物素材由来繊維のグラスウール・ロックウールが半減し、硬質ウレタンが激増しています。ポリスチレン・セルローズファイバーも増加し、フェノール樹脂が増えています。

■断熱材の種類と長所と短所
断熱材の性能は、熱伝導率と厚みによります。熱伝導率は、低いほど良いものです。熱を伝えにくいのは気体で、貴(希)ガス、真空と性能が上がります。よく使われる断熱材は、空気をより細かく封じ込め、密度高いものほど性能が上がります。同じ厚みなら、熱伝導率が低いほど、熱のロスは小さくなります。建材として使うとき、強度が要ります。環境先進国ドイツの建材など欧米にも優れたものがありますが、ここでは入手容易な主要な材の紹介です。

断熱材の素材は、自然素材、鉱物素材、化学素材の三つがあります。
◆自然素材・・・製造からみても環境負荷の少ない材です。人にやさしいですね。柱・梁のみえる真壁造りにも向き、補助断熱候補です。

〇羊毛・・・羊の毛からつくられるものです。住宅にセーターを着るイメージです。虫  よけにホウ素を混入しますが、抜け出て人に害を与えることはありません。燃えます。一番の良さは、吸放湿性能がよく、湿気を調節します。
熱伝導率は、0.044・0.040・0.038w/m・Kです。断熱性能を上げるには、厚さを増します。柔らかいので、壁の充填と天井裏に使います。

〇セルローズファイバー・・・紙のリサイクル品です。難燃性をえるためホウ素を混入しています。漏れ出て人に害を与えることはありません。吸放湿性能がよく、屋内側に防湿フィルムは不要で、屋内の湿気調節をします。
やや密度があり、吸音・防音性能にすぐれます。ドライ工法で壁には充填、天井裏に、屋根下にネット張りして、吹き付けます。熱伝導率は、0.040W/m・Kです。

◆鉱物素材・・・石・ガラスを熱溶解して繊維状にしてマットにしたものです。グラスウールの繊維長さが短くなり、施工時間違って吸っても安全です。

△グラスウール:ガラスの再利用品です。安くて扱いやすく、今日まで最も使われてきました。繊維の密度により、いろいろな熱伝導率があり、使い分けます。住宅では屋内側に防湿フィルム、屋外側に放湿フィルムを張った製品が多用されます。自由に加工できますが、端部や隅部に隙間なく施工が難しいです。防音性能は、ロックウールやセルローズファイバーに劣ります。
水を一旦吸うと放湿できなく、重くなり性能が落ちます。屋内側に防湿フィルムをシームレスに貼ることが肝要です。防湿フィルム付きのマットを張っても、柱・間柱にはタッカー留めですから、湿気は漏れ出ます。北海道・東北の経験多い地方は慣れていますが、関東・東海・北陸以西は要注意です。
熱伝導率は、通常品で10kg/m3で0.050w/m・K、16kg/m3で0.045w/m・K、24kg/m3で0.038w/m・Kです。10kg/m3では断熱新基準に対応が難しく、高密度・高性能品に移行しています。

△ロックウール・・・玄武岩や安山岩などを原料とする鉱物繊維です。耐熱性に優れ、水吸いにくくカビません。グラスウールに硬く柔軟性が低い。やや重くて防音性がいいです。室内側に防湿フィルムを貼ります。
断熱性能は、0.034~0.038w/m・Kです。使用量で今までグラスウールが大きく、ロックウールが少なかった理由がよくわかりません。断熱新基準では、補助断熱に使われるでしょう。

◆化学素材・・・化学というだけで身構えますね。石油由来の化学的に安定した商品群で、ます健康には害はありません。火災時には、注意がいるものもあります。また、製造時からの経年劣化があります。ある時期から安定しますが、断熱性能がいつの時点なのか確認要ります。

△吹付け硬質ウレタンフォーム・・・ポリイソシアネートとポリオールを、触媒・発泡剤・整泡剤などと混合して、泡化反応と樹脂化反応を同時に行わせるプラスチック発泡体です。
現場での発泡が容易で、他の材料と自己接着し隙間の無い連続した断熱層をつくります。防湿シート・気密シートが不要で、省作業になります。
断熱性は優れ、熱伝導率は0.026~0.040w/m・Kです。
断熱性の高さと防湿・気密シート不要なことが、使用量が急激に増えています。
ただ、大きな問題があります。
今まで発泡剤にフロンを使って膨大な蓄積があります。解体時には、オゾン層破壊と温室効果をもたらす恐れがあります。現在は、フロンが使われていません。
自己接着に優れていることは、木材等に密着します。解体時には分離・剥離が無理で、木材はリサイクルできず、産業廃棄物となります。
また、火災時には爆燃性及び燃焼時に発生する有毒ガスのシアンガスの問題があります。微量ですが発生は間違いありません。炎が上がれば、即避難です。

〇ポリスチレンフォーム・・・ポリスチレンと難燃化剤に発泡剤を圧入混合し、押し出し機で製造し、成形品として板状で出荷します。炎を当てると不完全燃焼により、「すす」と刺激臭を発生。
材料引火温度は370℃ 発火温度は495℃です。
一番の特徴は、圧縮に強い(20トン/m2~)ことで、土中の基礎下にも使えます。壁・屋根の外断熱にも向いています。
熱伝導率は、0.022~0.040w/m・Kです。商品名に、スタイロフォーム、カネライトフォームなどがあります。

◎フェノール樹脂ボード・・・発泡プラスチックの中でも熱的・化学的に最も安定し、最も高い断熱性を持ちます。「難燃性」があります。外張り断熱に重宝です。
熱伝導率は、0.018~0.020w/m・Kです。
フェノバボード・ネオマフォームという商品名で普及しています。

〇パーフェクトバリア・・・ポリエステル(PET/ポリエチレンテレフタレート樹脂)100%でつくられています。PETは、繊維化するとふとん綿やフリース、シート化するとタマゴパックやペットボトルになります。パーフェクトバリアは、ペットボトルを回収して粉砕溶解し再繊維化した原料を使用し、石油原料から作り出す場合の約5分の1のエネルギーで製造しています。
真っ白で、作業性に優れ、素手で作業しても安全です。吸放湿しませんが、湿気を溜め込むことはありません。
熱伝導率は0.035W/m・Kです。使用実績は多くはないのですが、補助断熱に向きます。

■お勧めの断熱材と構法・・・関東・東海・北陸以西では
外張り断熱+充填断熱が良さそうです。
外張りには、壁・屋根共フェノール樹脂板、基礎にはポリスチレン版です。
充填断熱は構法に関係します、筋交い工法なら細部も充填できるセルローズファイバーの吹込み、パネル工法なら吸放湿する羊毛・セルローずファイバーか、扱いやすいパーフェクトバリアです。

脇田 幸三

建築家 株式会社綜設計代表
岐阜市生れ 名古屋市在住
1989年11月綜設計設立
主に住宅・マンション・医院を設計
名古屋工業大学大学院修了
テーマ:“大きな人を育て、大きな人生を歩む”住まい
趣味:読書、朝のランニング