省エネ住宅|断熱と気密&防湿

建築は、用・強・美の3点で語られることがあります。それは建築要素にも言えます。
■壁・屋根の用
用=機能は、人の皮膚と同じです。風雨雪に耐え、陽射しや寒さなど温熱環境から身を守り、呼吸することです。防雨・耐水性、防風性、耐雪性は、一番の外皮で対処します。外壁・屋根材は、それらの性能とともに耐久性が問われます。その裏には、バックアップとして防水層があります。以前ならアスファルトフェルトなど、今は薄くて軽い透水防水シートを張ります。

□温熱環境の気密性
呼吸ということと気密は矛盾します。気密性能は、高いほど省エネの安定した温熱環境を実現できます。床面積当り2cm2を切れば高気密といわれ、1cm2とか0.5cm2以下の住宅も登場しています。
数字ではわかりづらいですね。建築基準法では換気回数が決められ、適用除外があります。15cm2/m2以上の隙間があれば、換気は不要です。120m2の住宅なら、30cm角の穴が2カ所ポッカリ空いた状態です。これは、一昔前の隙間風の多い住宅です。今日建てるとすれば純木造の茶室とか数寄屋建築です。同様に1cm2/m2の気密性能なら、7.7cm角の穴が2カ所空いた状態です。頑張って気密を高めても、意外と大きな隙間になります。

□温熱環境の湿気対策
住宅の中では、煮炊きやお湯から発生する蒸気、人の皮膚と呼気からでる水分(不感蒸泄といって1日当たり900ml/人)など生活に伴い大量の湿気が発生します。二酸化炭素も発生します。持ち込む商品からは揮発性物質が出てます。臭気もあります。
気密性を高めると、ちょっと息苦しい感じがします。上記の汚染空気は、換気扇によって排出し、新鮮空気をとり入れます(計画換気)。湿気は換気扇で排出しますが、壁体や小屋裏に浸入する恐れがあり、防湿シートが必要な場合があります。あるいは調湿機能をもつ断熱材を選ぶことで肌に優しくなります。柱・梁や板材の木、土壁や紙、断熱材として用いる羊毛やセルローズファイバーが有効です。それらは同時に保温・蓄熱にも寄与し、温熱環境を安定させます。
湿気は気化熱にあたる潜熱を持ちます。空気の持つ顕熱と共に熱交換する全熱交換機を使うと空調負荷が低減します。

□温熱環境の断熱性
素材は、自然系、鉱物系、石油系由来の三つがあります。それぞれの断熱材には、特徴があります。熱伝導率、透湿性、耐火・難燃性、圧縮強さといった物性と、コストと施工性があります。硬い板状の材と柔らかい繊維系の材があり、前者は外張り断熱に、後者は充填断熱に多用されます。
断熱層を設けるとき大事なのは、気密性と防湿性を明確に押えることです。気密シートと防湿シートを使い分け、確実に施工することがとても大事です。

■壁・屋根の強
地震や台風に対する強度、火に対する耐火性を指します。木造住宅の強度は、柱と梁の間に斜め材の筋交いを入れる工法、柱・梁の外側に合板を張り巡らすパネル工法、そして稀に柱間に貫と板壁を入れる伝統工法がありまます。斜め材を用いる場合、三角の壁ができ、充填工法では吹付け工法以外では細部の収まりが難しくなります。板状の断熱材を用いる場合、パネル工法が基面をつくり都合のいい相性になります。
木造住宅の耐火性は、構造材の柱・梁を火に強い石膏ボードなどで覆い尽くせばほぼOKになります。が、木の良さを生かすには柱・梁を現わす真壁工法が優れます。火を使うガス調理に魅了を感じれば、暮らし方の工夫をします。延焼や類焼を避けるには外壁の外側での耐火・防火性を高めることになります。

■壁・屋根の美
外観の美しさです。建築の形と壁・屋根の外装材の美しさと耐久性です。外装材の裏側は、空気層を設ける通気工法が一般的です。この場合の外装材は、省エネ・断熱性の基準では計算外となります。

■材による工法と温度勾配と湿気
断熱材には適した工法があります。「どこで気密を確保するか」「湿気に弱い場合の防湿シートをどうとるか」が、それぞれ違います。外張り工法、充填工法、併用する付加工法の特徴を以下に例示します。どこかに穴があると、壁体内に水が溜まり、不都合が生じます。

① 外張り断熱の場合/熱貫流率 U=0.3741
壁の中に温度勾配をつくらないで、壁の内を室内環境とし壁内温度を一定にします。耐力合板の外に気密シート張り巡らし(窓や換気扇回りも)、その上に断熱材を張ります。気密と断熱を合わせて施工します。室内側は、大壁、真壁、構造体現わし、どれもOKです。
室内側に防湿シートはなく、壁の中の密閉空気層は内気に近い状態になります。内部結露の恐れはありません。
断熱材が高いものの施工性がよく、信頼できる工法です。ただ、断熱材の厚さには限界があります。外装材の固定が不安になり、取り付け強度が弱くなります。さらなる断熱強化には充填断熱との併用になります。

② 湿度調節しない充填断熱の場合・・・たとえばグラスウール/熱貫流率=0.4206
断熱材として圧倒的に採用されたきたのが、グラスウールです。安く軽くて施工性がいいのですが、湿気に対して弱いのです。透湿性がなく、一旦湿気が入ると抜けなくてそのまま結露水になり、性能劣化、材のズレ落ちの恐れがあります。室内側に防湿フィルム(耳付)、外側に透湿フィルムが貼られた袋になった製品が普及しています。が、端部や三角部の取り付けは難しく、室内側に防湿気密シートを貼り巡らすことが必要です。
防湿気密シートは、コンセントや配管・換気扇回りも隙間なくシームレスに貼ります。手慣れた職人チームが入念に施工しても、100%はまず無理です。
柱の間に充填するので、空隙を無駄なく施工できるので有効な方法です。が、室内側に断熱材を入れるため、温度勾配は材の内と外で大きくなります。どこかに防湿気密シートに漏れがあると、ここから湿気が浸入します。夏の絶対湿度は室内が低いのですが、朝方外壁側が冷えると、内部結露が発生します。冬の絶対湿度は内外とも低いのですが、室内側が暖かい分やや高くなります。その湿気が外側の低い温度では結露になる可能性があります。防湿気密シートの完ぺきな施工が、とても大事です。
最近のグラスウールの密度が上がり、熱貫流率は大きく改善しています。たとえば、高性能グラスウール20kgを厚さ105mmで入れると、熱貫流率は0.3000になります。厚みが有利に働きます。ただ、湿気に対しては、同様な問題を抱えます。

 

③ 湿度調節する充填断熱の場合・・・たとえばセルローズファイバーや羊毛
断熱材で湿気に対して強いというより、湿気をコントロールする材、セルローズファイバーや羊毛があります。②と同じ断面で、外壁合板の外に防湿気密シートを張ります。
自然系の断熱材は、室内に湿気が多い場合には湿気を吸収し、室内が乾くと放出します。土壁や珪藻土仕上げと同じです。室内側で保温や蓄熱に有利に働きます。コストが高いのですが、とてもいい材料です。

性質の近いものにパーフェクトバリアがあります。合成樹脂PETの再生品です。透湿性が高く湿気を吸いません。ただ、外壁側に室内の湿気が移るということで、寒気の厳しい地域では結露の恐れがあり、室内側に防湿気密シートが要ります。
材は自然系に比べ安く、素手でもグラスウールのようにチクチク感がなく、扱いやすいものです。

 

④ 断熱材が気密性と防湿性をもつ充填断熱の場合
・・・たとえば吹付け高密度ウレタンフォーム/熱貫流率=0.3603
熱伝導率が低く、気密性と防湿性をあわせ持つ断熱材ならば、重宝です。現場発砲の吹付け高密度ウレタンフォームが相当します。柱・梁・筋交いに密着し気密層をつくり、透湿性能が極めて低いのです。とても楽な工法です。
しかし、以下の4点から決して推奨しません。
1) 普及が進み低コストになり安易な採用となり、高気密高断熱への取り組みが甘くなる
2) 中規模以上の地震で木材との密着がはがれ、隙間となる恐れがある
3) 火災時に極小とはいえ、有毒なシアンガスを発生し、逃げ遅れに不安がある
4) 解体時にウレタンが付着した木材は、産業廃棄物となり、リサイクル不可能となる

 

⑤ 外張り断熱に充填断熱を付加
高断熱化がさらに求められると、外張り・充填の単独では難しくなります。併用の不可断熱となります。ここでは、外張りにネオマフォームt=45、充填にパーフェクトバリア t=60/熱貫流率=0.2279をみます。
温度勾配は、熱伝導率の低いネオマフォームで大きく、パーフェクトバリアでやや緩くなります。室内側のパーフェトバリアは透湿しますが、外張りのネオマフォームが室内側の温度を夏は下げ(冬は上げ)て、内外温度差の緩和があり結露には至りません。

付加断熱は、高性能な断熱材の外張りに、自然系の断熱材で充填するのが一番です。コストを抑えるなら充填にパーフェクトバリアを採用します。

脇田 幸三

建築家 株式会社綜設計代表
岐阜市生れ 名古屋市在住
1989年11月綜設計設立
主に住宅・マンション・医院を設計
名古屋工業大学大学院修了
テーマ:“大きな人を育て、大きな人生を歩む”住まい
趣味:読書、朝のランニング