省エネ住宅|基礎・床断熱の方法

日本の建築は、すべて高床でした。丸石の上に柱を建てるだけで、柱間は風が吹き抜けていました。寒気には外周に板を当てるなど防風はしました。でも、床板の間からは隙間風を感じました。夏期の湿気を乾かすのが冬期でした。床下は、まったくの外でした。夏を旨とし、冬は我慢でした。流石に床の防風・気密・断熱は、半世紀前から工夫が本格化しました。
住宅の基礎は布基礎となって、周囲はコンクリート壁となりました。風が抜けるように換気口が設けられました。床下はやはり外扱いです。1階床に断熱材を敷くこと、断熱材の抜け落ち防止、防湿コンクリートを打つ、間仕切り壁下が盲点だったので防風止めを入れ、気密シートを敷くことが順次普及しました。換気口は、まんべんなく空気が通るように床パッキンが導入されました。先行した北海道・東北地方を追いかけるように関東以西では1990年代辺りから、床断熱法がほぼ確立しました。

また、もう一つの基礎ー地盤耐力の偏りに強い「べた基礎」が普及してきました。鉄筋量が増えますが型枠が減り、作業性に優れます。住宅下の地面は、土・防湿コンクリートから鉄筋コンクリートになりました。屋内に採り込んでもいい、と思ったのでしょう。外周基礎立上りと基礎下に断熱材を設ける基礎断熱の登場です。断熱材は、圧縮力と水に強い板状の発泡ポリスチレンフォームが多用されます。

■床下空間は、外部か内部か
住宅は柱・土台を、丸石の上に載せる、布基礎に固定する、べた基礎に固定する、と耐震的に強くされてきました。丸石に載る床下は、這って回るには十分な高さがあり、ずっと外部でした。布基礎になると、風道が換気口だけとなり、床下点検には十分な高さがなくなってきました。シロアリ対策には、多くは薬剤で対処しました。床下は、積極的に利用されることはありませんでした。べた基礎になり、コンクリート内の屋内化が始まりました。床下点検、空気の循環、一部物置に当てるようになっています。
床下は内部と考え、シロアリや漏水などの点検に動き回れる高さを確保し、さらに空気循環や収納の場とする方がいいでしょう。

■基礎下の温度
床下が外部の場合、樹木の下や建築の陰で体験するように日当より夏は涼しく冬はより寒く、冬がより厳しくなります。床下が内部の場合、基礎下の温度はどうなるでしょう。
地中の温度は、10メートルほど深部では、外気の年平均温度と同じ程度に一定となります。地表では外気の温度に強く影響され、地中は徐々に温度差がなくなってきます。地面は蓄熱・保温効果があり、地下温度は地表温度から遅れて変化します。春分と秋分は、太陽高度同じで地表面に達する太陽エネルギーが同じですが、大地が冷え込んだ春分は寒さが残り、秋分は大地が蓄熱した熱で暑さを感じます。

地表から50cmほど下の基礎周囲は外気温の影響が強いのですが、温度はやや遅れて変化します。
基礎の中央では、建物が大きな土饅頭に相当し、地中2~3メートルの温熱環境になります。地表に比べると、2か月ほど遅れて変化します。
梅雨の時期、地中温度は15~20℃で、土間なら湿り気を帯びた色になります。ベタ基礎の上で結露の恐れがあります。盛夏には、基礎自体の蓄熱が室内温度を下げる効果がありますが、多湿な夏を過ごすには湿気対策が重要です。
冬期の基礎下温度は5~15℃で、室温18~20℃に対し低いので、断熱をしないと室温を下げることになります。
ベタ基礎下部の周囲から90cmは、H28年省エネ基準の対象ですが、その内側は建築主の判断次第です。地熱を少しでも利用するなら、冬の室温を10~15℃にして、ベタ基礎下を無断熱にします。
冬期の生活温度を20℃近くにし、梅雨・夏期の基礎上の結露をなくすには、ベタ基礎下を断熱する方が良さそうです。

■地中のもう一つの心配事
基礎下は、地盤改良・柱状改良・砕石地業などをして全体に固めて、捨てコンクリートを打って墨付けをします。基礎外周と下部に防湿フィルムを敷き、地中の湿気対策をより確かにします。手順通り進めれば問題ないのですが、問題は、シロアリです。
シロアリは、木の株や根を土壌に返す貴重な生物です。が、住宅の木が対象となれば別問題です。シロアリは視力がなく、食料を求めて動き回ります。何でも食べて、吐き出すか死にます。うまく行けばアリ道をつくって仲間を呼び、餌を貪ります。センサーは、温度だけのようです。
シロアリは住宅内部に浸入する経路は、床下換気口(網付が必須です)、土間、基礎コンクリートのクラック・割れ目からです。防湿コンクリート・土間コンクリート・ベタ基礎で、床下らの侵入は地盤の不同沈下などからくるクラックだけです。基礎コンクリートは一体化し、密実に打つことが大事です。それでも基礎外周コンクリートの経年の割れはたまにあります。基礎断熱材もシロアリの餌食になります。
また、外壁は通気工法が一般的になり、基礎上の通気口の下地材にシロアリが入る可能性があります。通気口の防虫網が欠かせません。
シロアリ対策に万全は、難しいです。外部の基礎に割れや蟻道がないか時折見て回る、紫陽花の咲く頃に羽アリが一斉に飛びだす時期に様子を見る、床下の点検をしやすい床下空間を確保し、何年かに一度は水回りの漏れを含めて診る、万が一異常を発見したらプロに相談し、部分的に薬剤でやっつける、など保守が大事です。

■床断熱と基礎断熱
住宅の下部は、基礎と1階床です。長年の経験から床下を外部として、1階床で断熱気密を採る方法と、床下を内部扱いとして基礎で断熱する方法があります。
H28年省エネ基準では、床断熱性能は床面積と熱貫流率Uから導き出します。基礎断熱は、基礎外周長さと線熱貫流率ψから導き出します。
基礎断熱は、断熱材をベタ基礎の外に敷くか、内に敷くかの違いがあります。3つの断熱・気密のやり方をあげます。

① 床断熱
1階床の根太間、あるいは大引き間に断熱材を入れ、その上に防湿気密シートを張ります。給排水・エアコン配管・電線管の貫通、床下点検口や床下収納の周囲は、確実な気密と断熱材の末端処理が求められます。間仕切り壁の下部は、通気止めの充填が重要です。

断熱材は、グラスウールが広く使われてきました。根太間に高性能グラスウール24kg t=42の場合(下地合板t=12+フローリングt=15)、熱貫流率U=0.6445(熱橋無視)になります。大引き間に24kg t=80の場合(下地合板t=24+フローリングt=15)、熱貫流率U=0.3680になり、24kg t=120の場合、U=0.2612になります。防湿気密シートは、断熱材の上に張ります。
セルローズファイバーを大引き間にt=105充填すればU=0.3205に、同じくパーフェクトバリアをt=105敷けばU=0.2861になります。防湿気密シートは、セルローズファイバーの下に、パーフェクトバリアの上に敷きます。
板状断熱材は、根太や大引き、端部に隙間が生じやすく、お勧めできません。
高密吹付けウレタンフォームは、合板を捨て貼りして上から、あるいは床下から吹付けますが、推奨できません。

② 基礎断熱-断熱材の外張り
基礎立上りの外側と基礎下に板状断熱材を敷きます。シロアリ対策には、防蟻効果のあるスタイロフォームATなどを使用します。地上部は、紫外線からの保護のため専用モルタルを塗ります。
基礎下の断熱材は、冬期の屋内温度を15℃以上とし、梅雨と夏期の結露防止のため、全面に敷くことを進めます。この場合、布基礎コンクリート容積は大きな蓄熱体となり、屋内の保温に効果を発揮します。

基礎の外周にスタイロフォームAT t=50、基礎下外周部90cmにt=30を使用すると、線熱貫流率ψ=0.415となります。外周部をt=30とすれば線熱貫流率ψ=0.454となります。省エネ基準の計算式に採用する数値は、ともにψ=0.5となります。なお、基礎高さは、地上から400mm以下とします。

③ 基礎断熱-断熱材の内張り
シロアリ対策を最優先すれば、ベタ基礎の内部に後から断熱材を貼りつけます。屋内に断熱材の露出を避ければ、さらに保護コンクリートを打つことがあります。
この場合、ベタ基礎コンクリート自体は熱的には外部となり、蓄熱体にはなりません。

基礎の外周立上りにスタイロフォームt=50、基礎下外周部90cmにt=30を使用すると、線熱貫流率ψ=05526となります。外周部をt=30とすれば線熱貫流率ψ=0.6202となります。断熱材を外に張る場合より、線熱貫流率ψはやや高くなります。

脇田 幸三

建築家 株式会社綜設計代表
岐阜市生れ 名古屋市在住
1989年11月綜設計設立
主に住宅・マンション・医院を設計
名古屋工業大学大学院修了
テーマ:“大きな人を育て、大きな人生を歩む”住まい
趣味:読書、朝のランニング