省エネ住宅|外皮平均熱貫流率UA

省エネ住宅の表示・認定・適合には、省エネ基準が元になります。そこでは、まず断熱性能が求められ、外皮平均熱貫流率のチェックがあります。
最近までの断熱仕様で、モデル住宅に適用しどのような内容か見ます。外皮平均熱貫流率は、屋根(天井)・外壁・基礎(床)と窓の断熱性で決まります。

■モデル住宅の概要
長年手掛けてきた基礎・壁外張り・屋根断熱で、床下・屋根裏とも屋内扱いです。120~135㎡ほどで、2台のエアコンで快適です。1台は主に暖房用で1階の壁に、もう1台は主に冷房用に屋根裏に設置します。空気循環は、吹抜けと中間ダクトファンによる送風で行います。エアコンはそれぞれ8~12帖相当です。夜間のオン・オフは、住まい手の感覚に任せています。
・住宅規模:木造2階建て、延べ面積150㎡、真ん中に吹抜け・階段
切妻屋根(南北に庇あり、東西は庇なし)
・基礎断熱材:スタイロフォームAT(防蟻用断熱材)50&30t
・外張り断熱材:ネオマフォーム 45t
・屋根断熱:ネオマフォーム 90t
・窓:樹脂アルミ複合サッシ+Low-Eペアガラス

■モデル住宅の計算結果
・外皮平均熱貫流率UA=0.58 < 0.87(5~7地域の基準値)
・冷房期の平均日射熱取得率ηAC=2.0 < 2.8(6地域の基準値)
ともに問題なくクリアしてOKです。

■窓を工夫すると
1)窓のサイズを小さくします。南の掃き出し窓(2,000H)5カ所を1階の1カ所(2,700W)を除いて腰窓(1,100H)にしまず。
・外皮平均熱貫流率UA=0.54
・冷房期の平均日射熱取得率ηAC=1.5
と、0.04改善します。UAを小さくするには、窓サイズを小さくすることです。
これは、当然です。屋根の熱貫流率が0318、外壁の熱貫流率が0.418に対して、窓の熱貫流率は2.33です。熱貫流率の面では、窓は圧倒的にお荷物です。窓面積を小さくするか、性能の高い窓を採用するしかありません。

2)窓の性能を上げます。ワン・ランク上の窓=熱貫流率2.15を採用します。
・外皮平均熱貫流率UA=0.55
・冷房期の平均日射熱取得率ηAC=1.9
と、UAは0.03改善します。これをさらにUPするには、高性能サッシがあります。それは、木製または樹脂枠にLow-Eトリプルガラス仕様になります。min熱貫流率1.60です。するとUA=0.49となり、大きく改善します。ただ、これは防火規制のある地域では使えません。

■断熱材を工夫すると
1)屋根の断熱材の厚みを120にします。
・外皮平均熱貫流率UA=0.54
・冷房期の平均日射熱取得率ηAC=1.9
屋根の熱貫流率は、0.308から0.241になりますが、外壁に比べ屋根面積が小さく、全体では0.04の改善になります。

2)外壁に付加断熱を加えます。柱間に充填断熱を加えます。柱・梁を見せる真壁を想定して、吸放湿・保温性のあるセルローズ・ファイバーを90mmの厚みで吹き込みます。
・外皮平均熱貫流率UA=0.48
・冷房期の平均日射熱取得率ηAC=1.8
外壁の熱貫流率は、0.435から0.257となり、全体で0.06の改善になります。

3)窓の性能UPと組み合わせます。
・外皮平均熱貫流率UA=0.45
・冷房期の平均日射熱取得率ηAC=1.8
この値は、北海道=地域1・東北=地域2の基準値0.46をクリアします。

4)さらに数字を求めると、高性能サッシ(防火規制がない地域や第1種住居専用地域向け)、屋根の断熱材の厚みを150mmに、付加の充填断熱の厚みを120mm(柱・梁が見えない大壁造り)にします。
・外皮平均熱貫流率UA=0.37
・冷房期の平均日射熱取得率ηAC=1.7

5)ハウスメーカーや大手ビルダーのカタログやホームページには、UA=0.20・025という数字があります。たとえば、まったくお勧めできませんが、高密度吹付けウレタンフォームを使います。壁の柱間に厚み120mm、天井に300mmとします。
・外皮平均熱貫流率UA=0.34
・冷房期の平均日射熱取得率ηAC=1.6

■冬期の平均日射熱取得率ηACについて
1)庇なしの箱型住宅とします。
・外皮平均熱貫流率UA=0.58
・冷房期の平均日射熱取得率ηAC=2.1
ηAC=2.1となります。庇の効用で、冷房期の平均日射熱取得率が0.2違います。冷暖房費が変わってきます。

2)南面と窓の数を1・2階とも1カ所増やし、窓の高さを1階=2.33、2階=2.03とするとします(耐震性のっ話は別です)。
・外皮平均熱貫流率UA=0.63 < 0.87
・冷房期の平均日射熱取得率ηAC=3.1 > 2.8
ηAC=3.1となり不適合となります。すっきりした箱型住宅で、南の窓を大きくとることが難しくなります。窓の性能を上げる必要があります。

■どこまで外皮平均熱貫流率UAを小さくするか
省エネルギー基準値をクリアして、さらにどこまで断熱性能を上げましょうか。費用がかかります。省エネはとてもいいことです。冷暖房を抑え気味な快適な暮らし、省エネ家電、太陽陽光発電と余剰電力対応など、いくつもの選択があります。
また、これは計画時の机上計算です。現場での確実性はありません。気密性を表わす隙間相当面積C値など施工の精度が問われます。
断熱性は、手段であって目的ではありません。住まいは、家族が「大きな人を育て、大きな人生を歩む」器です。空間・場づくりが何より重要です。

脇田 幸三

建築家 株式会社綜設計代表
岐阜市生れ 名古屋市在住
1989年11月綜設計設立
主に住宅・マンション・医院を設計
名古屋工業大学大学院修了
テーマ:“大きな人を育て、大きな人生を歩む”住まい
趣味:読書、朝のランニング