縛りマンション|社長が住む街ランキング

■「社長が住む街ランキング2020」週刊ダイヤモンド20.02.08
 2000年代初めまで企業経営者が自宅を構え、富裕層が集まる地域といえば大田区田園調布と世田谷区成城でした。それが今では様変わりして、「職住近接」が基本と。11年の東日本大震災の発生を受けて、リスク管理上、会社と自宅をすぐに行き来できるようにとの意識が高まっていることに背景がある、と。
 そのため、東京・丸ノ内や大手町の本社に近い都心5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷区)への集中が今でも進んでいるのが実情だ、と。全国および東京のトップとなったのが港区赤坂で、繁華街の裏手のエリアにあるマンション。ランキング2位が新宿区西新宿の林立するマンション。以下、港区六本木、渋谷区代々木、港区南青山、港区高輪、新宿区新宿、港区芝浦、港区三田、江東区亀戸(中小企業のオーナー)、港区南麻布と続く。大阪でも西区南堀江、新町、北堀江など繁華街に近いマンションが根強い人気、と。他に愛知、福岡、北海道、宮城、兵庫県のトップ20のマップが掲載されています。

■企業トップのマンション選びの理由
 富裕層や企業トップの邸宅イメージは、閑静な緑に囲まれた住宅群でした。今まで高級住宅地と呼ばれてきた街の新陳代謝はゆっくりで、新たな富裕層が入り込む余地は少なく、あっても超高価な住まいになります。サラリーマン社長が入手できるのは、数億円まででしょう。リスク管理上の職住接近というのは、ディベロッパーの謳い文句で陰謀でしょう。超高級感の共用エントランスや玄関ホールと住戸内の豪華な仕上げ・設備機器を除けば、どこにもあるマンションです。新参者は、名の売れた街の優良品と思われるものを住まいにするしかないのです。彼らが週末の別荘や緑茂る本宅を持ち、1週の疲れをとりレフレッシュできる基地があればいいのですが。

■企業トップの住宅選びが間違っている
 企業トップの仕事は、未来を見据えながら当面の課題に取り組み、日々の案件を即決即断していくことでしょう。5年・10年・20年先の未来志向、新たな起業に向けての試行錯誤、現事業の拡大など攻撃範囲も守備範囲も広いものです。エネルギッシュでありストレス多いポストです。
 彼らの住まいは、どんなのが望ましいでしょうか。トップを勝ち取ってきた今までの住まいでいいのです。が、トップの役割は、質的にも量的にも格段の違いがあります。トップに相応しい住まいがあります。子育てがほぼ終わった夫妻中心の住まいでは、3つの大きな役割があります。昼間のストレス・疲れを癒すこと、明日の英気を養うこと・エネルギー充電、気持ちを高みに・直観力を曇りなく維持することです。トップが選ぶマンションで押し並べて欠けるのは、三つ目です。高級豪華マンションとは言え、空間的には普通のマンションと変わりありません。階高3m前後、天井高2.4~2.6mのなかでの陣取りです。疲れて帰って、寛ぎ、明日も頑張るぞ、休みます。寝ている間、低い天井は「今のままでいい」「現状で十分」と囁きます。朝起きて、今日もがんばるぞ、と背伸びします。目線は高見ではなく、水平方向です。心の奥底から起き上っていきません。これが、縛りマンションです。
 また、超高層マンションの選択も増えているようです。「田舎者」と「成上がり者」が好む傾向があります。問題は高さです。超高層ビルやTVタワーの展望台で感動する風景は、澄んだ近くに迫る高みの空より、見下げる箱庭のような下界です。何かわかったような気になります。ビジネスにおいて見下げるようになったら、下降線の始まりで。早朝見上げる景色が、拡がる空や樹々や街だと気持ちも前向きになります。
 望ましいマンションは、大きな吹抜けがあり、小階段がある感覚刺激の多い空間豊かな解放マンションです。

脇田 幸三

建築家 株式会社綜設計代表
岐阜市生れ 名古屋市在住
1989年11月綜設計設立
主に住宅・マンション・医院を設計
名古屋工業大学大学院修了
テーマ:“大きな人を育て、大きな人生を歩む”住まい
趣味:読書、朝のランニング