子育て住宅|ファミリービジネス-企業

 私たちが新たな仕事始めようとするとき、会社をつくります。何をするのかを決め、仕事の場所と人のつながり、当面の資金が要ります。何をしたいのか熱意でもって、親族・友人・仕事関係者を説いて、発起人と資金提供者を募ります。出発は、まず同族会社=ファミリービジネスです。ほとんどの会社は、零細・小企業から出発します。最近では、起業とか創業といい、アイデアが優れていれば、資金から顧客獲得まで応援するグループが現れ、いち早い事業の展開機会が増えています。

※ 日本の法人税法では、「3人以下の株主が全発行株式の5割以上を持つ会社」を「同族会社」と分類します。ここでは、創業者一族が企業経営を担っている、または株式を保有している会社を、一般的に「オーナー企業」「同族会社」「同族経営」などと呼び、「ファミリービジネス」と呼びます。

 同族企業・同族経営と聞くと、前近代的で遅れた会社に見られる傾向があります。公私混同が疑われます。オーナー関係者が生活費や遊興費を経費に当てる、個人的な好みで人材配置をするなど、会社の私物化がありそうです。家族の対立・争いがあります。また後継者の問題も聞きます。家業を継ぎたがらないことがあり、「馬鹿息子」とか能力がなく社員がやる気を落とす、など言われます。

 が、日本の実情は「ファミリービジネス」が大きな存在です。企業数では約95%を占め、雇用者の60~70%が働いていると指摘されます。また、世界的にみて長寿という傾向があります。帝国データバンク2019年の調査(約147万社収録)で、業歴 100 年以上の「老舗企業」は全国に 3 万3259 社(2.27%)存在し、うち上場企業は 532 社、 2019 年に業歴 100 年を迎え、新たに「老舗企業」の仲間入りを果たした企業は 1685 社と報告されます。2020年は、戦後75年です。太平洋戦争、バブル崩壊やリーマン・ショックなどの“金融・経済危機”、阪神淡路大震災・東日本大震災といった“災害”などを乗り越えてきた企業です。
 また、21世に入り「ファミリービジネス」が業績面で優れているという評価がされています。いくつかの理由が指摘されています。
〇目先の利益にとらわれがちな任期4~6年の期サラリーマン社長にはできないない、25~30年の長期的視野に立った経営活動。
〇創業者から受け継がれる経営理念の流れの存在・・・顧客、従業員、仕入先、得意先、地域社会など利害関係者を大切にする。
〇お金や資産に加え、人に受け継がれる技術やノウハウの蓄積があり、独自性を持つ。
〇創業者一族のカリスマ性、所有と経営の一体化による企業カラーと意思決定の速さ。
 一方、 「ファミリービジネス」に転機がきています。創業家がトップから外れ、非創業家の経営陣がとって変わろうとする動きが増えています。少子高齢化というといこともありますが、経済社会の激変期です。グローバリゼーションとテクノロジー進化です。世界の土俵に立つ、世界的視野からビジネスを見る、人工知能やモノのインターネットといった急激な技術革新への対応が求められています。経営トップの資質が大きく問われています。

 ファミリービジネスの事業承継は、後継者育成が一番の課題です。視野の広さ、語学力、感性、理系の学力、意志疎通能力、直観力、自制心、忍耐力、好奇心、やり抜く力、夢見る心などが求められます。帝王学や経営学といった知見は、のちのちの話です。
 後継者育成は、まず家族と住まい・住環境からです。人の成長の基盤づくり、裾野拡大と種蒔きは、五感・小脳の感受性期である0~8歳がとても大事です。学習意欲旺盛でゴールデンエイジと呼ばれる9~15歳の過ごし方も大事です。この時、よくよく間違ってしまうのが、子育てが片親任せになりがちなことです。仕事や起業で頭いっぱいで、子どもや家族と過ごす時間を削ってしまうことです。ここは踏ん張って、子育てを家族みんなですることです。そして住まいと周りの環境も重要です。子どもにとって、いつも刺激的な環境が大切です。

 さらに長寿ファミリービジネスの後継者育成には、2つ大事なことがあります。一つは「自分の好きな道を歩んでほしい」と思いと並行して、親の生き様――懸命に働いている仕事を語り、時には見せることです。家業に興味・関心を持ち、種を蒔くことです。祖父母からの経験談や知恵の伝授もいいのもです。年末年始に一族郎党が集まり、創業以来の喜怒哀楽を昔話のなかに聞き、一体感を感じます。

 そこで二つ目が、その舞台です。創業の地と家屋です。戦災地では、再建の第二の創業地です。ビジネスの規模が大きくなれば、現在の事業地は創業地から離れることが多くなります。創業地は特別です。創業者が幼少を過ごし、起業したところです。酒蔵、土間と小上りと売り場、大黒柱と飛び交う桁・梁、屋根がむき出しの作業場と天窓などなど。すでに日々体験できなければ、年に数度訪ねて追体験し、一族を確認しプライドを育みます。
 家族、住まいと住環境の継承が、ビジネスの継承につながります。

脇田 幸三

建築家 株式会社綜設計代表
岐阜市生れ 名古屋市在住
1989年11月綜設計設立
主に住宅・マンション・医院を設計
名古屋工業大学大学院修了
テーマ:“大きな人を育て、大きな人生を歩む”住まい
趣味:読書、朝のランニング